chemistry

海に流出したプラスチックごみを燃料に変える夢の技術が開発される

2019.02.20 21:00:10 Wednesday

Point
■プラスチックごみを燃料に変換させる新技術が開発された
■高圧下で約455℃に熱した水の中にプラスチックごみを入れたところ、燃料に変換された
■実用化に向けたパイロット実験を行うには、資金調達が課題

プラスチック汚染の問題は、年々深刻さを増しています。毎年800万トンものプラスチックが海へ流れ出す中、「プラスチックごみをどうやって取り除くのか?」は喫緊の課題です。

プラスチック包装を削減したり、ドローンを用いたプラスチック汚染地域の特定したりと、さまざまな努力が行われていますが、米パデュー大学の研究チームがこれまでに無かった新しいアイディアを提唱しました。それは、プラスチックごみを「燃料に変える」というもの。論文は、雑誌「Sustainable Chemistry and Engineering」に掲載されました。

Use of Supercritical Water for the Liquefaction of Polypropylene into Oil
https://pubs.acs.org/doi/10.1021/acssuschemeng.8b03841

柔軟すぎる!オイル・燃料・ガスなどに七変化

研究チームは、ポリオレフィン(プラスチックポリエチレンによく使われるポリマー)のごみの9割以上をガソリンやディーゼルに似た高品質の燃料に変えることができる、新しい化学変換処理を初めて開発しました。高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、リニアポリエチレン、ポリプロピレンを含むポリオレフィンに対応しているそうです。

研究チームが用いたのは、超臨界水(水の温度と圧力を上昇させて、液体と気体の密度が同じでこれらを区別できなくなる領域の水)や亜臨界水(臨界点よりもやや低い領域の水)。水を高圧下で約455℃に熱し、その中にプラスチックごみを入れたところ、プラスチックごみが約1時間で見事オイルに変換されました。プラスチックごみに含まれる不純物は、オイルに変換されるか、処理水の中に抽出されますが、この抽出作業は変換と同時に行われます。

しかもこの技術、変換の条件に応じてオイル、燃料、ガスとさまざまな製品に変えてくれるという柔軟性も備えているそうです。

次ページ課題は低コスト化

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