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演技中の役者の脳には特殊な働きが見られることが判明

2019.03.15 Friday

『ロミオとジュリエット』のワンシーンCredit: pixabay
Point
■役を演じている時とそうでない時で、役者の脳活動のパターンが異なることが判明
■演技中は、前頭前皮質の自己意識に関係する領域の活動が低下し、意識や注意に関係する楔前部の活動が上昇
■役者は、意識を分割させ、役になりきると同時に、自分自身を監視する

役者…恐ろしい子!

役によって、全く違う顔を見せる「役者」ですが、演技中の役者の頭の中で何が起きているのかは、多くの科学者にとって長年の謎でした。

カナダのマクマスター大学の研究チームが行った最近の研究で、役を演じている時とそうでない時で、役者の脳活動のパターンが異なることが明らかになりました。それはまるで、演技中は自己が抑制され、役柄が役者を乗っ取ったような状態なのだそうです。論文は、雑誌「Royal Society Open Science」に掲載されています。

The neuroscience of Romeo and Juliet: an fMRI study of acting
https://royalsocietypublishing.org/doi/10.1098/rsos.181908

「心の理論」と自己意識の抑制

研究チームは、主に演劇を学ぶ学生から成るカナダ訛りの英語を話す俳優15名を対象に、ある実験を実施。シェイクスピアの作品『ロミオとジュリエット』に登場する主人公ロミオとジュリエットの役を演じるワークショップに参加させ、役になりきってさまざまな質問に答えるよう指示しました。その後、実験室で被験者にさまざまな実験を行い、脳のMRI画像を撮影しました。

Credit: pixabay

MRI装置の中では、さまざまな質問がスクリーン上に表示されます。質問は、悲恋の恋人たちが直面しがちな「彼らはパーティーに乱入するか?」、「彼らは2人が恋に落ちたことを両親に言うか?」といったものです。

被験者は、これらの質問への回答を、順不同に与えられる4つの仮定に基づいて考えるよう指示されました。1つ目は被験者自身の観点から、2つ目は特定の親友一人になりきって、3つ目はロミオやジュリエットとして回答しました。4つ目は自分自身として答えますが、ただしイギリス訛りの英語で話さなければならないという条件が付いていました。

実験の結果、与えられる仮定によって脳活動が異なることが判明。親友になりきって回答する時は、自分自身として回答する時と比較して、前頭前皮質のある領域の活動が低下しました。こうした変化は、「心の理論」、つまり他者が何を考え感じているかを推測する能力に関する従来の調査でも確認されています。

また、ロミオやジュリエットの役になりきっている時も同様の反応が見られたことから、人が役を演じる際、その役柄についての第三者的な知識や推測を使うのではないかと、研究チームは考えました。

さらに、他者の役を演じる時に前頭前皮質で活動が低下した領域は、他にも2つありました。それらは自己意識に関連する領域でした。

論文の筆頭著者スティーヴン・ブラウン氏によると、自己の特性に関する知識を縮小・抑制し、不活性化することは、演技に含まれる一要素なのだそう。英語のアクセントを変えて自分自身として回答した時にも、同様の不活性化が見られたことから、身振りや話し方といった表示行為が役に入り込む上で役に立つことが分かると、ブラウン氏は示唆しています。

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