意識を分割 役になりきると同時に自分自身を監視
加えて、ロミオやジュリエットになりきった場合のみ、楔前部という領域の活動が上昇することも分かりました。楔前部は意識や注意に関係しています。つまり、役者が意識を分割させ、役になりきると同時に、自分自身を監視しているということです。
米国の名優マーロン・ブランドは、セリフを覚えた上で、セリフを忘れる努力をしていたと言われています。観客にとって初めて見るやり取りが舞台やスクリーンの上で行われている以上、役者も初めて言葉に出す新鮮さを忘れるべきではないという考えに基づいた行動です。
まるで『ガラスの仮面』のマヤよろしく、自分自身を抑制して役になりきり、かつ自分自身を客観的に観察する…。こうした意識の分割に長けた人々こそが、名俳優と呼ばれるようになるのでしょう。