Point
■身体の重心を推定して、バランスを制御し転倒などから身を守るウェアラブルデバイスが発表された
■タツノオトシゴの骨格構造を参考にしたというこの装置は、人から失われた尻尾の機能を機械的に再現している
■空気圧式人工筋肉で制御された尻尾は、不安定な足場、荷物運び、高齢者の歩行などで、運動をサポートすることが可能だ
ロボットを着ることで身体動作をサポートするという技術は、近年急速に進歩を遂げています。
オリンピックでも、大量の荷物運搬にパワーアシストスーツを導入することが決定され話題になりました。
高齢化社会へと邁進する日本では、身体運動を機械がサポートするという研究は重要な位置づけにあります。
そんな中で一風変わったウェアラブルデバイスが発表されました。それは機械で尻尾を再現し、平衡感覚を制御するというものです。
この研究は、慶應義塾大学大学院の研究者によりロサンゼルスで開催されたSIGGRAPH ’19カンファレンスにて発表されています。
https://dl.acm.org/citation.cfm?doid=3305367.3327987
「Arque」と名付けられたこの装置は、タツノオトシゴの骨格構造をヒントにして設計されていて、人工椎骨と空気圧制御の筋肉によって稼働します。
ほとんどの動物は、機動性や重心のバランスを尾に頼っています。私達はすでに尻尾という機能を失っていますが、尻尾を振ることで発生する力は、私達が運動するときの重心の制御に有効に作用する可能性があります。
「Arque」では、上半身に装着したボディトラッカーの情報から重心位置を推定し、それに応じてバランスを保つように尻尾を動作させています。
椎骨を繋いだ構造から、利用者の身体サイズに合わせて、この装置は自由に長さを調整することができるようです。
「馬鹿げているように見えるかもしれませんが、これは驚くべき効果を発揮する可能性があります」
この装置の研究者は、見た目が多少間抜けになってしまっていることは認めつつも、その機能には自信があるようです。
確かにこの装置は、高齢者の歩行を支援して転倒を防ぐことができます。さらに不安定な足場での作業や、重い荷物持って移動する際のバランス回復にも威力を発揮します。
この機械の尻尾には高齢者から労働者まで、幅広く運動をサポートできる可能性があるのです。
実際、パワーアシストスーツのような荷物運びをサポートする機械は、労働者の作業支援に導入されています。
“東京2020ロボットプロジェクト”が本格スタート✨#Tokyo2020 では、さまざまな場でロボットが活躍予定です。第1弾は、車いす席での観戦サポートをする生活支援ロボットと、重いものの運搬で活躍するパワーアシストスーツ!今後も新たなロボットを発表予定です?
詳細は▶️https://t.co/xY0Sy9hL84 pic.twitter.com/6OXAkfm7Yk— Tokyo 2020 (@Tokyo2020jp) March 15, 2019
SFではお馴染みの人間と機械が融合するサイバネティックスは、足や腕、視力など、失った体の機能を取り戻すだけではなく、本来人間には無い器官を取り付けて身体の機能拡張を目指す段階へ来ています。
杖の代わりに尻尾を振る老人を見る日も近いのかもしれません。
でも、最終的には、こんな風になってしまうんですかね…。