Point
■2017年に土星探査機カッシーニは土星への突入して20年に及ぶ調査を終了した
■この最終送信データから、土星の内部を渦巻くジェット気流が、約8500kmの深さで停止していることをが明らかとなった
■土星を包むガスは、深部ではその圧力から液体となっており、それは磁場の影響で蜂蜜のような粘性を持っていると考えられる
土星探査機カッシーニはその調査活動の最後に、土星への突入を実行し、土星内部の詳細な重力測定データを送信してその人生を終えました。
そしてそのデータは、今まで謎に包まれていた厚い土星の雲の下が、どのようになっているかを垣間見せてくれたのです。
このデータの解析結果によると、土星深部では高い圧力によりガスが液化しており、磁場の影響で蜂蜜のような粘性の流体になっているというのです。
この研究は、オーストラリア国立大学と米ローレンス・リバモア国立研究所の研究者による国際研究チームにより発表され、アメリカ物理学会が発行する「Physical Review Fluids」に8月27日付で掲載されています。
https://journals.aps.org/prfluids/abstract/10.1103/PhysRevFluids.4.083701
謎の多い巨大ガス惑星の内部
土星や木星は、巨大ガス惑星に分類され、コアは溶けた岩石に包まれた重元素で、主な惑星の構成要素は流動的に渦巻く水素とヘリウムとなっており、地球などとは異なって固体表面は持っていません。
コアの重元素は非常に高温高圧の状況下にあるため、どの様な状態になっているかは現状ほとんどわかっていません。
そのため、巨大ガス惑星の内部は、ずっと謎に包まれているのです。
土星探査機カッシーニは1997年打ち上げ後、7年掛けて土星へたどり着き、実に13年もの間、土星調査を続けてきました。そして燃料も使い果たし、その役目を終えるとき、土星への突入を敢行し、謎に包まれた土星内部の情報を地球へ送信したのです。
このデータを解析した結果、土星の内部では8500キロメートルの深部まで激しいジェット気流が渦巻いていましたが、それよりさらなる深部では唐突に風が停止していました。
これまで、その理由がなぜなのか、誰にも分からなかったのですが、今回発表された研究では、その答えが提供できる土星モデルを構築しています。
土星深部では非常に圧力の高い場所があり、そこでは惑星を包むガスが液化してます。この液化ガスは、高い電導性を持っているため、惑星の磁場の影響を強く受け高い粘性を持つ状態になっているというのです。
それは、まるで蜂蜜のような状態だといいます。
この粘性が、取り巻くガスによるジェット気流を、これ以上深い場所へ到達させない原因であると考えられるのです。
ガスが磁場により蜂蜜のような状態とは、これまた想像を絶する状況です。
こうした、土星内部の様子は現状予測の段階であり、より精密な理論テストをするために、研究者たちは研究を進めていくと話しています。
こうした、謎の多い巨大ガス惑星の構造が、少しずつ明らかになっていくことで、まだまだわからないことの多い太陽系の惑星たちの調査についても、より理解が進むだろうと、期待されています。
何億光年も離れた天体も研究対象となる現在、割と身近な太陽系の惑星については、大体判明しているんだろうと勝手に想像してしまいますが、案外近くの惑星のことがまったくわかっていなかったりするのです。
なにせ、月に有人探査を行うことさえ多くの困難がつきまとう状況なのです。
宇宙の本格的な調査はまだまだ始まったばかりなのでしょう。
https://nazology.kusuguru.co.jp/archives/27205