Point
■スコットランドの高地の森で見つかった遺跡は、違法ウィスキーの蒸溜所だった可能性が高い
■遺跡の使用年代は18世紀末で、その当時、スコットランドは蒸留酒の製造や販売に関する法律が厳格化されていた
■遺跡を作った人々は、国に内緒で上質のウィスキーを作り、大きな利益を得ていたと推測される
いつの時代も、お酒への飽くなき探究心は尽きないようです。
スコットランドの都市グラスゴーから北に30kmほど離れた高地の森に、隠された石造りの遺跡が発見されました。
調査を行なった国営団体「Forestry and Land Scotland」の研究チームによると、「この遺跡は18世紀の終わりに違法ウィスキーの製造所として使われた可能性が高い」といいます。
国の目を盗んでこっそりと…
研究主任のマット・リッチー氏によると、遺跡の狭く細長い形状はアルコールの蒸留に非常に向いているとのことです。さらに、年代調査の結果、遺跡が使われていたのは1700年代の終わりから1800年代の初めであることが判明しました。
この時期のスコットランドには、ウイスキーの製造や販売に関する法律が厳格化され、各地で蒸留酒の製造が停止されたという過去があります。また、当時の税関たちが各地に出向き、違法な蒸留酒の捜索や没収、蒸留設備の押収も行なっていたそうです。
そのため、人々は政府の役人に見つからず、かつウィスキーの主な市場であるグラスゴーに比較的近い最適な蒸留場所を見つける必要があったのでしょう。この遺跡は、まさにその結果と考えられます。
リッチー氏の調べによると、遺跡が見つかった地域は、盗んできた牛や違法な蒸留酒を隠すために使われたという伝承記録も見つかったそう。さらに、遺跡にはお酒を作るのに必要な穀物の乾燥窯や近くには川の水もありました。
逆に蒸留酒の製造所以外には考えられないほど、状況証拠が出揃っています。
文献調査によると、当時の政府は、上質なウィスキーを作るのに必要な伝統的材料である「大麦麦芽」に重税をかけていることが分かっています。
そのため、蒸留を商売にしていた低地の人々は、大麦麦芽から「コーン」を原料とした蒸留酒造りに切り替えました。そのせいで、お酒の品質は著しく落ちたと伝えられています。
一方で、遺跡のある高地では、秘密裏に大麦麦芽を使用した上質なウィスキーを作っていたことがうかがえます。というのも、遺跡に残されている大きな穀物窯から麦を使用した痕跡が発見されているのです。
リッチー氏は「おそらく高地の人々は、良質なウィスキーを秘密のルートで売りさばくことで、非常に高い利益を得ていたでしょう」と推測します。「どうしても美味い酒が飲みたい!」という精神は、人類が続く限り、この先も時代を超えて受け継がれていくのでしょう。