Point
■現代人の祖先が誕生した地が、南アフリカの「ボツワナ北部」とピンポイントで特定される
■母系遺伝する「ミトコンドリアDNA」を調査することで、最初期人類の起源を追跡
■結果、最初期の人類は約20万年前にボツワナ地帯に生まれ、13万年前の気候変動に伴い移動していった
「およそ20万年前に南アフリカに現代人の祖先が誕生した」のは専門家の間でも共通の認識でしたが、その正確な場所は謎に包まれていました。
しかし今回オーストラリア生物医学研究所により最初期人類の誕生した場所が、ザンベジ川南部に位置する「ボツワナ北部」が最有力として発表されました。
そこには、現代技術なしには解明できない秘密が隠されていました。
研究の詳細は、10月28日づけで「Nature」に掲載されています。
https://www.nature.com/articles/s41586-019-1714-1
「ミトコンドリア・イブ」を探せ!
調査にあたり研究チームが着目したのは、「ミトコンドリアDNA」です。
ミトコンドリアDNAは、細胞小器官であるミトコンドリアの中に保持されており、「アデノシン三リン酸(ATP)」を生産する重要なDNAです。また、ATPはすべての生命に欠かせない生命活動のエネルギー媒介物質です。
ヒトにおけるDNAの大部分を占める「核DNA」は、両親それぞれから半分ずつ受け継ぎますが、ミトコンドリアDNAは、原則として母親からしか受け継がれません。
実は、このミトコンドリアDNAを調べれば、お母さんのお母さん、そのまたお母さん…と女系の祖先をたどることができます。
そうして現れるのが「ミトコンドリア・イブ」です。つまり現代人の母系祖先を遡れば、共通する一人の女性に行き着くという考え方です。
注意が必要なのは、すべての人類がミトコンドリア・イブから生まれたわけではないということです。イブと同時代にも他の女性はいましたし(子孫が男だけの場合にミトコンドリアDNAが途切れる)、イブのさらに前の先祖を遡ることもできます。
ただすべての母系祖先の中で、ミトコンドリア・イブが現代人に最も近い祖先ということになるのです。
現在イブに最も近い子孫たちが「L0系統」と呼ばれる遺伝子グループで、現在ではアフリカにしか存在しません。
研究チームは、L0系統の包括的なゲノム年表を確立するため、南アフリカに住む1000人以上の地元民から血液サンプルを採取しました。
その中には、L0系統のDNAを高い割合で保持することが知られている民族「コイサン」の人々(200人)も含まれています。