どうやって音を出すのか?
植物は声帯を持っているわけではないので、ぎゃーと悲鳴を上げているわけではありません。
植物の出す音はキャビテーションと呼ばれる現象で生じる音です。キャビテーションとは、液体が流れるときに気泡が生じることを言います。このキャビテーションの気泡の破裂などによる振動が音を発しているのです。
植物の中には水を輸送する維管束が走っていますが、ここでキャビテーションが起きることで、植物の周りにはクリック音のようなものが生じるのです。
今回の調査では、この音が人間には聞こえない周波数で周囲5メートル程度まで響いていたと報告されています。
そして、このクリック音は植物が乾燥していたり、切断された場合、通常より明らかに多く発生していたのです。
乾燥状態のとき、トマトは1時間に平均35回、タバコは11回、茎の切断時には、トマトが1時間平均25回、タバコは15回の音を立てていました。
これ以外の状態の植物では、クリック音は1時間に1回程度しか出ていません。ここには顕著な違いが見て取れます。
さらにこの発生する音は、植物が乾燥のストレスを受けているか、切断のストレスを受けているかで、異なる音の強さや周波数を出していることもわかりました。
そこで、研究チームはこの超音波を機械学習によって人工知能に覚えさせ、他の騒音と区別して測定できるようにしました。
この結果、温室内に置かれた植物が乾燥しているのか、切断されてストレスを受けているのか、正確に特定することに成功したのです。
この成果は、農作物の状態をきめ細かく制御して、収穫量や品質の向上を図る精密農業の分野に役立てると考えられます。
この研究は、まだ植物の他のストレス状態については詳細に検証されていません。またこの音が周囲の動植物に影響するかも明らかになっていません。
しかし、この超音波の周波数は昆虫やマウスなどは聞き取ることが可能なものであり、周囲5メートルまで響いているという事実も考慮すると、この植物の音が他の生物にも影響している可能性は十分に考えられます。
ただ、植物が周囲へサインを送る手段は、他にもすでに多く発見されており、昆虫が音に反応するという考えは現状推測の域を出ないものです。
実際は悲鳴というよりは、意図せず発せられる音のようですが、予備実験によるとこうした音はサボテンでも確認できているそうです。
部屋においたサボテンが、部屋の湿度を教えてくれる…。そんなアプリがいずれ配信されるようになるかもしれませんね。