- 研究により、ベトナム山間部にある「竹の棒による運搬法」が物理学的に優れていると判明
- 「竹の棒による運搬法」にはホッピング玩具に似た物理作用がある
ベトナムの山間部では、竹の棒が荷物運びに利用されています。
この竹の棒によって、地元の人たちは非常に重い荷物を楽に運べるようです。実際、高齢者でも若者と同量の荷物を運ぶことができます。
もちろん、ベトナムの村人たちが特別力持ちだというわけではありません。高重量運搬の秘密は、竹の棒とその扱い方にあります。
最近、タイグエン大学のヴァン・ヴィン・ハックらの研究チームによって、荷物を運ぶ際の竹の棒の利点が明らかにされました。
彼らは柔軟な竹の棒を使用することで、荷物の重さを歩くエネルギーに変換していたのです。
研究の詳細は2019年12月4日、「Journal of Experimental Biology」に掲載されました。
Load carrying with flexible bamboo poles: optimization of a coupled oscillator system
https://jeb.biologists.org/content/222/23/jeb203760
竹の棒の「しなり」を利用した運搬法
ベトナムの東南アジアの山村には、モン族という少数民族がいます。彼らの間では、弾力性のある竹の棒の両方に荷物をぶら下げ、天秤のようにして運ぶのが一般的です。
この運搬法は、馴染みのない人にとっては非常に負荷の強い方法に思えます。しかし、実は物理学的に優れた運搬方法であると判明したのです。
通常、人が歩く時にはエネルギーを消費するものです。そして、そのエネルギーコストの大部分は一歩を踏み出す時にかかります。
前進するためには、踏み出した足とは別の足で地面を押す必要があります。
例えば重いリュックサックを背負っているときには、「体重+荷物」分の力を片方の足だけで蹴り上げなければいけず、とても負荷がかかります。
一方、竹の棒を使用すると、「竹の棒のしなり」によって上下の振動が生じます。
竹の棒を使って前進するために一歩踏み込むと、荷物の重みで竹と荷物は下方向に大きく沈み込みます。
その後、竹の弾性によって、荷物の重さによって生じた下方向の力が逆方向(上方向)に変換されます。つまり。上方向への跳ね上がる力が生まれるのです。
少しの時間、跳ね上がる力が加わるので、この瞬間に地面を蹴ることで、片足にかかる力は「体重+荷物-跳ね上がる力」となります。
跳ね上がる力がプラスされるので、前進する時には荷物の重さをあまり感じなくなるのです。