料理が「人間らしさ」をつくった
人類の脳が発達するきっかけは、今から約200万年前の旧石器時代に、タンパク質と脂肪分を豊富に含む「肉」を食べ始めたことです。
初期人類はこの時期に火を発明し、動物の肉を「焼く」という調理法を編み出しました。焼くことで、肉は食べやすく、消化しやすい状態になります。
これが転機となって、人類は茎を一日中噛む生活から解放されるのです。
さらに新石器時代に入り、調理法のバリエーションが増えていきます。
土器や調理器具、それから火力調節に優れた炭火の登場により、焼く以外に、「煮る・茹でる・蒸す・揚げる」などの調理法が可能になりました。
この頃から人類にとっての食は、「生きるための作業」から「楽しむもの」へと明確にシフトしたのです。
こうした料理の進歩が、脳の発達を加速させていきました。
栄養価の高い食べ物を効率よく摂取できるようになったこと、保存の効く調理により狩猟・採集の時間が減ったこと、減った時間を農耕や牧畜、住居や道具の製作に当てられるようになったこと。
このように、料理は大きな脳の維持が容易になっただけでなく、知能を高めるための時間を生み出したのです。
また、料理により、一家団欒の時間が増えたことも指摘しておくべきでしょう。
今ある人間らしさの源は、料理だったのかもしれませんね。