2020年4月20日、新潟大学の榛沢和彦氏らが、酸化チタンなどの「光触媒」を利用した「洗って繰り返し使える抗菌性マスク」の開発に成功したと発表しました。
マスクの構造は二重構造となっており、ガーゼや布マスクのつけ心地を改良した、スーパーストレッチ素材を使った外側マスクと、酸化チタンなどの「光触媒」を練り込んだ内側マスクから構成されています。
内側も外側も、粉石鹸を使ったネット入れ洗濯や手洗いに対応していて、100回洗濯したとしても元の80%の性能が保てると発表されています。
また、内側マスクの繊維に練り込まれた「光触媒」は、紫外線などの光があたると、活性酸素を発生させ、ウイルスの感染力を弱めるそうです。
なぜ「光触媒」が練り込まれていると、ウイルスの感染力が弱まるのでしょうか? そもそも光触媒って…?
光触媒は水から「活性酸素」を作る
光触媒とは、光を吸収することによって化学反応を促進する物質のことです。
ハイブリッドマスクでは、マスクに練り込まれている「光触媒」である酸化チタン(TiO2)に光を照射すると、光エネルギーによって水と酸素から、2種類の活性酸素「・OH(ヒドロキシラジカル)」と「・O2–(スーパーオキシド)」が生じます。この活性酸素は酸化力がとても強く、ウイルスを酸化分解して死滅させます。
では、どのようなメカニズムで活性酸素が発生するのでしょうか。
酸化チタンが水に作用して活性酸素を作るメカニズムは、主に4つの工程から成り立っています。
①酸化チタンに光(紫外線)があたる
酸化チタンに紫外線などの強いエネルギーを持った光があたると、酸化チタン中の電子が、そのエネルギーを吸収して不安定な状況になります。これを電子が励起(れいき)されたといいます。
②電子(e–)と正孔(h+)が生じる
光エネルギーによって励起された電子は、不安定になったことにより、普段いたはずの場所から移動します。すると、元いた場所が、正の電荷をもった穴(正孔)になります。
③空気中の酸素(O2)が励起された電子(e–)と、水(H2O)が正孔(h+)と反応する
④活性酸素「・OH(ヒドロキシラジカル)」「・O2–(スーパーオキシド)」が生成
③の反応は以下の反応式で表されます。
H2O + h+ → ・OH + H+
このとき生じた2種類の活性酸素がウイルスを分解することで、ハイブリッドマスクは抗菌性を発揮するとのこと。
以上のように、光触媒は化学的に抗菌作用が証明されている技術なのです。