- 北極圏で発見されていた新しい恐竜種属が、分析の結果エドモントサウルスであることがわかった
- エドモントサウルスはオオカミ等と同様、非常に環境適応に成功した生物だったと考えられる
- 北極圏に適応したエドモントサウルスは、北米とアジアを繋ぐベーリング陸橋を渡り日本まで生息域を広げていた
エドモントサウルスは、アヒルのような頭を持つカモノハシ竜(ハドロサウルス科)の恐竜です。
この恐竜は、これまで米国コロラド州からカナダアルバータ州辺りまでが生活圏だったと考えられていました。
その後、新種と予想される恐竜ウルグナールクがアラスカで発見。しかし、この恐竜を詳細に分析した結果、エドモントサウルスであったことが判明しました。
白亜紀後期は現代よりずっと温暖な時代だったとはいえ、アラスカなどの北極圏は冬になると日照時間が短くなり、餌資源も制限される厳しい環境だったと考えられています。
しかし、エドモントサウルスは、ほとんど形状を変えることなく北極圏の環境にも適応できたと考えられ、この時代陸地でつながっていたベーリング陸橋を渡って、北米からアジアまで生活圏を広げていたようなのです。
また、北海道ではエドモントサウルス族の仲間、カムイサウルスが発見されていますが、北米の恐竜がなぜ日本でも見つかるのかという疑問も、ここから明らかになりそう。
謎の新種 ウグルナールク
白亜紀後期は、多種多様な恐竜たちが生息していた時代で、北極圏でも、多くの恐竜の化石が見つかっています。
しかしこの時代は、現代に比べればはるかに温暖だったとはいえ、北極圏の冬は日照時間が短く気温も低下して餌が自由に得られない厳しい環境だったと考えられています。
この時代のアラスカは、陸続きでアジア大陸ともつながっていて、どんな恐竜が北極圏でも生活できたのかという問題は、恐竜たちの分布や渡りを理解するためにも重要な問題です。
米国アラスカ州には、6000以上の恐竜の骨が見つかっている化石の産地があります。
ここで見つかった新種にウグルナールクという恐竜がいます。
ウルグナークルはアヒルに似た頭のカモノハシ竜の仲間で、イヌイットの言葉で「太古の草食動物」の名前です。
ただ、この新種の恐竜は子供の骨が見つかっただけで、大人の骨は見つかっていません。
動物の骨というのは成長するに従って大きく変化し、固有の種には顕著な特徴が現れます。そのため、子供しか見つからないウルグナークルは、「ほんとうにそんな新種が存在するの?」と疑問の声が上がっていました。
多くの骨が見つかる場所では、複数種の骨が混ざったキメラ状態で新種と判断してしまう場合があります。
そこで、今回の研究は、このウグルナールクの頭蓋骨だけに着目して、その特徴を再調査してみたのです。
その結果、多くの特徴が既存のエドモントサウルスの頭蓋骨と一致。これはウグルナールクが無効の新種であり、実際はエドモントサウルスであることを示唆しています。
これまでエドモントサウルスはカナダアルバータ州(北緯53度)まででしか見つかっていませんでした。しかし、この発見はエドモントサウルスがもっと北のアラスカ(北緯70度)まで生活圏を持っていたことを示しています。
これだけ北まで生息していたとなると、エドモントサウルスはこれまで考えられていたよりもずっと、幅広い環境に適応できる種属だったのかもしれません。
しかも、厳しい北極圏においても、その形状はほとんど変えずに適応していたことを意味しています。