脳のスイッチをオフにして「記憶を削除する薬」が開発される
脳のスイッチをオフにして「記憶を削除する薬」が開発される / 直前の記憶をわずか10秒で抹消する薬が開発された/Credit:Nature Neuroscience
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脳のスイッチをオフにして「記憶を削除する薬」が開発される (2/3)

2020.07.19 Sunday

前ページ記憶消去には事前の「オフスイッチ」の仕込みが必要

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サルにド忘れを強制する

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記憶を削除されたサルはエサの位置を忘れるが、エサがあったことは覚えている/Credit:Nature Neuroscience

研究者は効果の実証のためにサルを使った実験も行いました。

実験は極めてシンプルであり、上の図のようにサルの目の前で報酬となるエサを左右のフタのついた箱の中に隠し、次にサルと箱の間をカーテンをひいて、箱を一瞬だけ(0.5~10秒)隠し、すぐにまたカーテンをあけます。

サルが馬鹿でない限り、エサが左右どちらの箱に隠されたかを覚えています。

オフスイッチを仕込まれただけのサルも、エサがどちらに隠されたかを覚えていました。

しかしオフスイッチを仕込んだサルに対して、カーテンで仕切る前にDCZを投与した場合、僅か10秒カーテンで仕切るだけで、サルの正答率は50%まで落ちました。

2つのうち1つが正解の問題で正答率50%ということは、つまり完全なあてずっぽうです。

ただ興味深いことに、サルはエサがどちらに入っていたかは完全に忘れていたものの、フタをあけようとしたことから、エサがあること自体は忘れていなかったのです。

つまりオフスイッチとDCZによる記憶消去は空間的な記憶のみを選択的に奪っていた、ということになります。

人間に例えれば、左右どちらの道の先に財宝があることは覚えていても、どっちだったかがわからなくなってしまった、ということです。

またこの結果は、報酬の存在の記憶と空間的情報の記憶が別の神経細胞に支配されていることを意味します。

報酬の存在自体の記憶を消すには、また別のオフスイッチとトリガーの組み合わせを探さないといけないようです。

次ページ使い道は無限

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