敏感なネアンデルタール人
実際にネアンデルタール人が痛みに敏感で、痛がりだったのか、ということは現代ではわかりません。
この結論には慎重な意見を述べる科学者も多く、実際のところ遺伝子の変異はそれほど痛みの感度に影響しなかった、または脳や脊髄は痛みを修正する機能を持つため、それほど痛みの伝達に影響はなかったと考える人もいるようです。
しかし、ネアンデルタール人の歯垢などを分析すると、彼らが植物から抽出した鎮痛剤を利用していたこともわかっており、痛みに敏感で治療や看護には細心の注意を払っていたことも確かなようです。
痛みに敏感であれば、僅かな炎症や負傷の兆候も感じ取れ、早期に対処できるようになります。いずれにせよ痛みを感じることは悪いことではありません。
遺伝的な影響で痛みに敏感になる可能性があるとすると、大人なのに歯医者や注射は我慢できない、という人のことも笑えないかもしれません。
それは古代から継承された、現代人にわずかに残るネアンデルタール人の性質かもしれないのです。
この研究は、ドイツのマックス・プランク進化人類学研究所の研究者Hugo Zeberg氏を筆頭とした研究チームより発表され、論文は生物学全般を扱う学術誌『Current Biology』に7月23日付けで掲載されています。
https://doi.org/10.1016/j.cub.2020.06.045