■ネアンデルタール人の背中の状態についての議論に決着がついた
■これまで、「悪い姿勢だった」派と「現代人以上に真っ直ぐだった」派に割れていた
■化石の復元により、ネアンデルタール人の背中は「現代人っぽい」と判明
以前までネアンデルタール人は、私たちホモ・サピエンスの祖先とされていましたが、実は別系統の種族であったという見解が後の研究で有力になりました。
教科書で学んだことを覆すような研究結果が近年続々と出てきたネアンデルタール人ですが、今回判明したのはその「背すじ」。ネアンデルタール人は背筋が曲がり、現代人よりも猫背であるイメージがありますが、実際はそうではないようです。
このチューリッヒ大学の論文は、米国科学アカデミー紀要(PNAS)にも掲載されています。
https://www.pnas.org/content/early/2019/02/15/1820745116
数十年の議論に決着、ネアンデルタール人は現代人とソックリという結果に
ネアンデルタール人は約2〜5万年前に絶滅したヒト属の一種です。40万年前から存在したとされており、絶滅後は1800年代から化石が発見されてきました。その発見から約150年、研究は進んでいますが、まだ解明されていない事柄も多いのが現状です。
ネアンデルタール人の背中についても、その1つです。1950年代では、「原始人のような背中が曲がった姿」ではないかというのが一般的な認識でしたが、「現代人よりも極端に真っ直ぐ」という説もあり、幅広い解釈がありました。またその頃には、ネアンデルタール人は現代人と進化の方向性や行動様式が似ているともされました。
最近の研究では、ネアンデルタール人と現代人の違いは「背中」であるとされ、ネアンデルタール人は背中が発達していなかったとされました。
しかし今回、1908年に発見されたネアンデルタール人、出土した場所をとって「ラ・シャペローサン人」と呼ばれる状態の良い個体の化石をもとに、コンピュータで身体のモデルを作り仮想的に復元したところ、従来考えられてきた事とは逆の検証結果が出てきました。
研究チームが骨盤や頚椎、腰椎仙骨を調べたところ、位置や向きが我々現代人とそっくりで、背骨の湾曲が強調されると分かりました。さらに頚椎の突起部同士が摩耗したと思われる跡を発見。これらを元に、背骨のつくりは現代人とほぼ変わらないという結論が出ました。
さらに臀部の関節にも摩耗の跡があることから、臀部に負荷がかかっていたことまで現代人とソックリであったため、その姿勢についても同様であったと考えられるのです。
研究者たちは今回のラ・シャペローサン人の結果を、ネアンデルタール人の姿勢が現代人とあまり変わらなかったという「決定的証拠」と考えているようです。そのため研究チームは、「今後、後期更新世(〜1万2千年前)ごろのヒトに起こった生物学的行動的変化に注目ポイントを切り替える時だ」と説明しました。
今後姿勢の悪い人には、「ネアンデルタール人だって姿勢よかったんだぞ!」って注意すると精神的ダメージがアップするかも…。