- ハッブル宇宙望遠鏡は1年近く前からベテルギウスを観測しており、減光の一部始終も記録していた
- 観測データによると、減光を起こす前ベテルギウスは南側領域で大規模な爆発を起こしていた
- この爆発で塵の雲が形成され、部分的にベテルギウスを隠したことが減光の原因と考えられる
ベテルギウスの急速な減光の原因について、新たな研究成果が報告されました。
何度目だよ、と思う人もいるかもしれませんが、それだけベテルギウス減光は天文学者にとっても興味深い現象であり、研究対象とする学者が多く存在している証でもあります。
ベテルギウスは2019年10月辺りから南側の領域が突然暗くなりはじめました。
ハッブル宇宙望遠鏡の観測によると、この減光が起きる直前ベテルギウス南東の領域で、マグネシウム放出の劇的な輝度上昇が確認されていたのです。
この爆発によって、ベテルギウスは部分的に塵の雲で隠されることになり、それが南側だけ極端に減光するという状況を作っていた可能性があるとのこと。
ベテルギウスの減光については、さまざまな研究が行われ異なった説が提唱されていますが、これが真の原因になるのでしょうか?
ハッブル宇宙望遠鏡は見ていた
ベテルギウスは赤色超巨星に分類される晩年の星で、その大きさは太陽系に置いた場合木星軌道まで飲み込むほど巨大です。
こうした赤色超巨星は周期的に膨張と収縮を繰り返すことで明るさが変化する変光星になります。
しかし、このベテルギウスは2019年10月から2020年2月中旬までに、前例のない減光を示し、明るさが3分の2以上低下したのです。
突然の減光の理由を説明するため、世界中の天文学者がベテルギウス観測データの検証を行い、新しい理論の開発を試みました。
最近示されたアイデアの1つは、ベテルギウスの表面を地球からでもわかるほど非常に巨大な太陽黒点のような低温の領域が覆ったためというものです。
超新星爆発じゃなかった…。 ベテルギウス減光の原因は星表面の巨大な斑点だったと証明される – ナゾロジー
しかし、今回のハッブル観測チームを率いるハーバード・スミソニアン天体物理学センターの副所長Andrea K. Dupree氏は、星の一部だけを覆う塵の雲(ダストクラウド)の存在を示唆しています。
ハッブルのベテルギウス紫外光分光観測は2019年1月から始まり、今回の数ヶ月続いた一連の減光現象の一部始終を捉えていました。
この観測は、ベテルギウスの変光の背後にあるメカニズムについて重要な手がかりを提供しているといいます。
ハッブル宇宙望遠鏡は、2019年9月、10月、11月に星の大気中を移動する高密度に加熱された物質の兆候を捉えました。そして12月には、いくつかの地上の望遠鏡がベテルギウスの南半球で明るさが極端に減少していることを観察しています。
ハッブルを使えば目に見える星の表面だけでなく、大気中を移動する物質まで見ることができるのです。
Dupree氏らのチームは、9月にベテルギウスの南東部にある高密度で高温の物質が星の外側に向かって移動していることを観測したとのこと。
ハッブルだけが、ベテルギウスが減光する証拠を見ていたのです。