安定したワームホールを作るには?
ワームホールを安定させるためには、負のエネルギーが必要になります。
これは古典物理学では許されていませんが、量子物理学の世界では「カシミール効果」で存在が確認されています(カシミール効果については、こちらの記事を参照)。
しかし、量子物理学は古典物理学では扱えない非常に小さな世界でのみ適用される理論です。負のエネルギーも存在するとしても、それは非常に小さいものでした。
今回の研究を発表したプリンストン高等研究所のMaldacena氏とプリンストン大学のMilekhin氏は、この効果が巨大な磁気を持つブラックホールでは、かなり大きくなることに気づきました。
新しいアイデアでは、荷電したゼロ質量フェルミオン(電子のような粒子だが質量は0の粒子)を、ブラックホールの磁力線に沿って移動させた場合、周囲の空間が平坦であれば粒子は円を描くように移動して閉じた空間を作り、ここでカシミール効果が真空エネルギーに働きかけ、負のエネルギーを持つことができると説明しています。
ここで発生する負のエネルギーの存在は安定したワームホールを維持させることができるのです。