くしゃみだけではない「ピペリン」の有用性
ピペリンは鼻の特定の受容体に関与して神経の末端を刺激します。
この受容体への刺激が、生物学的反射反応を引き起こして侵入者を外へ追い出そうとするのです。
つまりくしゃみは体に入った異物を追い出すための防御反応で、鼻の受容体はピペリンを不快な侵入者とみなしています。
また、ほこりが敏感に人の鼻を刺激するのと同じように、コショウが人の鼻を刺激するのは細かく砕かれた粉末の場合です。
ピペリンが他の実の部分と結合している状態なら、鼻の受容体と結びつくことができないのでくしゃみが起きません。粉末になった場合は、多数の受容体を同時に刺激するため、激しいくしゃみを誘発するのです。
ちなみに同じ香辛料の仲間で赤唐辛子の主成分、カプサイシンも同じようにくしゃみを引き起こします。しかし、カプサイシンはコショウとは異なる受容体のセットを刺激し、顔の痛みを脳に伝える三叉神経に直接接続されます。
よって、これはくしゃみだけでなく痛みの感覚も引き起こします。このため唐辛子を多量に摂取するのは辛いのです。
くしゃみの原因として紹介したピペリンですが、香辛料の持つ有用な効果の要因もピペリンが持っています。
ピペリンは毛細血管を広げて血流を良くし、エネルギー代謝を促進させます。また抗菌、防腐などの作用も持っています。
さまざまな化合物を持つコショウですが、ピペリンはその主役のようなものなのです。
また、コロナウィルスなどの影響で現在はくしゃみによる飛沫の広がりに関する研究も盛んに行われていますが、この実験の際、被験者にくしゃみを引き起こさせるために、科学者がピペリンを使ったりしています。
ただくしゃみが出るのを待っていては実験の完了に多くの時間がかかってしまうでしょう。意外な場所でもピペリンは活躍しているのです。
コロナ蔓延の時期に多用は避けたいところですが、くしゃみの誘発とともに香辛料のさまざまな魅力の主成分を持つのがピペリンです。正しく使って美味しい食事を楽しめると良いですね。