銀河同士の衝突による、大量のガス流出
活発な星形成銀河が大量のガス放出をしている場合、その原因についていくつかのアイデアがあります。
1つは、銀河中心にある超大質量ブラックホールを原因とするものです。
巨大ブラックホールは、非常に強い放射を行う降着円盤を持っています。この強力な放射が、銀河内のガスを外へと押し出しているというのです。
また巨大ブラックホールは、中心部からジェットという強力な噴射を行います。これに巻き込まれガスが流出していると考えられるのです。
別のアイデアでは、活発な星形成自体がガスを流出させている原因だと提案しています。
大量に生まれた巨大星の光の圧力や、または巨大な星が起こす超新星爆発がガスを銀河外へと流出させるというのです。
しかし、研究チームはこのいずれのアイデアも、今回「ID2299」で観測されたガス流出を説明できないと考えています。
そこでチームが着目したのが、銀河同士の衝突でした。「ID2299」はどうも2つの銀河が衝突して形成されたようなのです。
一般に2つの銀河が衝突した場合、潮汐力によって星やガスが銀河から引き離され、長く伸びた尾のような構造を作ります。
遠方の銀河に、こうした尾が観測されることは珍しいことですが、「ID2299」からはこの尾のような外に伸びる構造が観測されました。
そのため、チームは銀河同士の衝突がガス流出を起こし、銀河が終焉に向かっているのではないか? という新しい考え方を示したのです。
共同研究者であるフランス原子力庁のエマニュエル・ダディ氏は、「私たちの研究は、銀河の衝突でガス流出が引き起こるということ、そしてガス流出と潮汐による尾が似た見た目を持つということを示している」と語っています。
また、同氏は今回の発見が「銀河がどのように活動を終えるのか」という疑問に対する理解を変革するかもしれないと述べています。
研究者たちは、今回の発見に感動しているとコメントを述べています。
これを調べていくことで、銀河の進化に関わる重要な知見が得られると考えられるからです。
巨大な銀河でさえ、死の瞬間は訪れます。それは星を生むガスの流出から始まります。
今回の発見は、遠方の銀河が星形成を止めるメカニズムについて新しい光を投げかけるものです。
アルマ望遠鏡の高い観測能力は、銀河進化の複雑なパズルにおける重要なピースの1つを見つけ出したのだと、研究者たちは語っています。
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