木から木へのジャンプは高度な肉体制御が必要
かつて、私たちの祖先が樹上で生活していたころ、果物を食べつくした木から別の木に移動するには、大きくジャンプをする必要がありました。
しかし、このジャンプは簡単ではありません。
目的とする枝の強度評価、距離の測定、必要な筋肉の調節、そしてタイミングをあわせて枝を掴む一瞬の判断力。
全てに高いレベルが求められます。
このジャンプを上手くおこなえるサルは、他のサルに先駆けて果実を手に入れ、生存を確かなものにすることができました。
そして優れた能力は進化の過程で凝縮され、サルたちの跳躍力はより洗練された動作になっていきました。
また肉体にかかわる進化は、常に外見の変化のみに限定されるわけではありません。
高度で技巧的なジャンプをおこなうには、優れた肉体の制御が必要になりますが、これらを担当するのは筋肉ではなく、脳でした。
つまりサルたちはより効率的なジャンプをおこなう過程で、脳の高度化も成し遂げていたのです。
ただこの場合の高度化した脳とは数学や文学にかかわるものではなく、巧みな筋肉の調整能力でした。
そしてこの巧みな筋肉の調整能力こそが、音楽の起源となったのです。
なぜなら、音楽において最も重要なのは、歌でも演奏でも、細かな調節能力だからです。
いかに歌詞やメロディーが優れていても、バランスの取れていない歌や演奏は騒音に聞こえてしまうかもしれません。
では実際の証拠を交えて、音楽のルーツとジャンプの関係をみていきましょう。