予測不可能な世界
世の中には正確に予測できることと、それが非常に困難な現象が存在します。
月の満ち欠けや、ビリヤードボールの跳ね回る経路などは非常にうまく予測できる現象の代表です。
一方で、天気の変化や、生物の行動などは予測することが非常に困難であり、これを研究するのがカオス理論です。
カオス理論は大ヒットした小説・映画の『ジュラシック・パーク』の作中で詳しく解説されたことで、一般にも広く認知されるようになった印象があります。
『ジュラシック・パーク』の中では、数学者のイアン・マルコムが再生された恐竜たちの行動を予測制御することは不可能だという根拠として、自身が専門とするカオス理論について説明していました。
映画のマルコムは、サラ博士の手を取って、手の甲に落とした雫がどちらへ流れるか予測することは難しいと、口説き文句のようにカオス理論を解説します。
「産毛の生え方、見えない肌の荒れ、微妙な手の角度、いくつもの複雑な要因で同じことをしても結果はまるで違ってしまい、結果は予測できなくなる」
それがカオス理論だとマルコムは話します。
こうしたカオスの研究の中で注目されているのが光の経路です。
ある容器の中で光を反射させた場合、その経路は予測可能な問題になります。
しかし、実際はレーザーの不安定性や、容器内表面の非常に小さい不規則な凹凸によって、実験を繰り返すたびに光は異なる経路をたどることになります。
こうした光学システムは、カオス研究に非常に有用だと考えられているのです。
ただ、実際実験でそれを観察することは非常に困難でした。
「これは、しばらく前まで本当に熱い分野でしたが、私たちが必要なツールを持っていなかったために衰退しました」
今回の研究者、カリフォルニア工科大学のワン・リホン氏(Lihong Wang)はそのように語ります。
実験屋は実験を行うことができなかったため興味を失い、理論屋は実験で理論を検証できなかったため興味を失いました。
しかし、今回の研究は、そうした分野の人々に、最終的な実験ツールがあることを示すデモストレーションを行ったのです。