スパゲッティ化現象が起きるブラックホールと起きないブラックホール
事象の地平線となるシュバルツシルト半径のサイズは、ブラックホールの質量に依存しています。
そのため太陽質量のブラックホールの場合、事象の地平線はかなり小さくなり、シュバルツシルト半径の距離はだいたい3キロメートル程度です。
これが天の川銀河の中心にあるような、太陽の400万倍という質量を持った超大質量ブラックホールの場合、シュバルツシルト半径は約1200万キロメートルという大きさになります。
これは太陽の半径のおよそ17倍という大きさです。
そのため恒星質量のブラックホールに人が近づいた場合、事象の地平線を通過する前にブラックホールの中心に非常に近づくことになります。
強力な重力源から、3キロメートル程度というあまりに近い距離に来た場合、重力が生み出す引力はわずかな距離でも指数関数的に増大します。
これはブラックホールが引っ張る力が、自由落下をはるかに超える力で人を引っ張ることになり、頭とつま先の間だけでも、10億倍も引力の強さが異なります。
このため、恒星質量のブラックホールに人が近づいたとき、人の体はスパゲッティのように細長く引き伸ばされてしまい、生き残ることはほぼ不可能になってしまうのです。
これがスパゲッティ化現象と呼ばれるものです。
一方、超大質量ブラックホールは重力源の中心ポイントから、はるかに遠い場所に事象の地平線が存在します。
そのため、ここに人が近づいても、頭とつま先の間で起きる重力の差はほぼゼロです。
ここでは人体がスパゲッティ化を起こさずに、事象の地平線を通過することができるのです。
このため、レオ博士は生きて事象の地平線内に入ることも可能かもしれないと話しています。