同スピードを誇る生物にはクリアできない「3つの特徴」とは?
端脚類は、甲殻類の目のひとつであり、熱帯から極地まで世界中の水域に分布します。
今回調査された「Dulichiella cf.appendiculata(以下、D.appendiculata)」は、体長わずか数ミリで、北米の東海岸に分布し、死んだ藻類やプランクトンを食べています。
ハサミは、オスの片手にだけ見られ、成体の全体重の30%を占めます。
これほど小さくて動きの速いハサミの加速度測定をするのは容易ではありません。
研究チームは、高性能のハイスピードカメラを使って、シャーレの中にいれたD.appendiculataを撮影しました。
超高速で閉じるハサミは、水の外からでもパチッと音がし、近くの水圧を急激に変化させることで小さな泡がたくさん発生します(=キャビテーション)。
研究主任のサラ・ロンゴ氏は「彼らのスナッピングは3つの点で特異だ」と指摘します。
その3つとは、サイズが非常に小さいこと、水中の生物であること、スナップが何度も繰り返して再現できることです。
同等の加速度を持つ他の生き物で、この3つすべてをクリアするものはいません。
例えば、水棲のシャコのスナッピングも速いですが、サイズが大きく、体も頑丈です。
アギトアリのアゴを閉じる速度は、彼らのスナッピングを凌ぎますが、それは水の抵抗がない陸での話です。
また、クラゲの刺胞や植物の種子の射出速度も同等のスピードを誇りますが、一回性のもので、反復はできません。
しかし、D.appendiculataは、小さなサイズと水の抵抗というハンデがありながら、反復性のある高速スナッピングを実現しているのです。
ロボット工学において、この反復性は最も大きな課題となっています。
現在の技術で、上記の生き物たちに近い加速度は実現できているものの、これを繰り返すとパーツがその負荷に耐えきれず、故障してしまうのです。
同チームのシェイラ・パテク氏は「この小さな生物は、私たちが構築できないシステムをすでに持っており、彼らから学ぶことは非常に多い」と述べています。