中国の火星調査ミッション「天問1号」と探査車「祝融号」
中国は2011年にロシアと共同で、初の火星探査機「蛍火1号(けいかいちごう)」を打ち上げました。
が、蛍火1号は地球衛星軌道からの離脱できず、このミッションは失敗に終わりました。
そして昨年7月、中国は新たに火星探査機「天問1号(ティエンウェンいちごう)」を打ち上げ、今年5月15日、ついに搭載された火星探査車(マーズ・ローバー)「祝融合」が火星への着陸に成功したのです。
中国としては悲願が達成されたというところでしょう。
「天問」という名前は、古代中国の詩人屈原(くつ げん)の詩から来ています。屈原はこの詩の中で、普段から自分が不思議に思っていること、真実を知りたいが誰にも答えることができないことを書き連ねたといいます。
そのため、この探査機の名前には科学への飽くなき探究心、真実を探りたいという研究者たちの思いが込められています。
「祝融」というのは、中国古代神話における火の神の名前です。三国志が好きな人には、南蛮を治めた孟獲大王(もう かく だいおう)の妻、祝融夫人が浮かぶかもしれませんが、こちらも火の神の末裔を名乗っていました。
文化大革命をやった割には、中国の歴史文化を重んじた素敵なネーミングです。
このミッションを主導している中国国家航天局(CNSA)は、そのウェブサイト上で、祝融号が火星に降り立って最初に撮影した写真や、天問1号から切り離される瞬間の祝融号の動画などを公開しています。
これが祝融号が撮影した最初の火星表面の撮影写真です。
ちょうど着陸機から地面に降りるところのようです。上の方から突き出ている2本のアンテナは、地下レーダーです。
このカメラは探査者の前方の障害物を回避するためのもので、そのため大きな広角レンズが使用されています。
地平線が反った円弧形になっているのもそのせいです。
これを外から見た場合イメージ画像は、こんな感じになるようです。
下の画像は、探査者の後方がどうなっているか描いたイメージ画です。
ここには探査車の太陽光発電パネルとアンテナ、ナビゲーションカメラなどの存在がわかります。
この辺りの造形は、2000年代にNASAが作った火星探査車スピリットやオポチュニティに似ています。
撮影写真には、火星表面の地形状態が明確に映し出されていて、探査車の重要なハードウェアが問題なくきれいに展開されたことを示しています。
ハードウェアとは、電力を供給するソーラーパネル、天問1号と通信し地球からコントールするためのアンテナなどです。
祝融合の着陸地点は、NASAが1976年にバイキング2号を着陸させた場所と同じ、ユートピア平原と呼ばれる場所です。
ユートピア平原は、初期の火星に衝突した小惑星が形成したとされる、直径3000kmを超える巨大な盆地で、過去には海であったことを示す証拠が見つかっています。
祝融号の目的は、火星の土壌、地質構造、環境、大気、水についての化学的調査です。
アメリカNASAの探査車(キュリオシティやパーサヴィアランス)のように岩石を採取して化学的性質を調べるためのレーザーツールも搭載されています。
また、地下の水を探すレーダーも搭載されていて、この辺りはパーサヴィアランスと共通する機能です。
アメリカに続き、21世紀になってから火星に降り立った2番目の国となった中国。
祝融号はどんな新事実を火星から発見してくれるのでしょうか。