ベートーヴェンの悲愴な運命
若くしてモーツァルトに匹敵する新星と見なされ、作曲家としての名声を早い時期から確立していたベートーヴェン。
彼は一見成功者のように見えます。しかし、その運命は非常に苦難に満ちたものでした。
その理由は、彼が若くして患っていた難聴です。
ベートーヴェンはすでに20代後半から難聴の症状が現れはじめ、28歳の時点で十分に自覚するほど悪化していました。
音楽家であった彼にとって、聴力を失うことは、画家の失明や、彫刻家が腕を失うことに等しい絶望的な出来事だったでしょう。
しかし、ベートーヴェンは簡単には諦めませんでした。その決意は彼の残した言葉にも現れています。
「神がもし、世界でもっとも不幸な人生を私に用意していたとしても、私は運命に立ち向かう。
私は運命の喉首を締め上げてやるのだ。決して屈したりはしない!」
ベートーヴェンの代表作といえば「運命」ですが、彼はまさに過酷な運命に精一杯あらがった人物だったのです。
実際に、ベートーヴェンは聴力を大きく失った1803年から1812年にかけて次々と名曲を生み出していて、その数は72曲にも上ります。
では、耳が聞こえない彼はどうやって数々の作曲を成し遂げたのでしょうか?