核とミトコンドリアはすぐに仲良くなれなかった

全ては、私たちの先祖である古細菌がミトコンドリアの先祖である細菌の酸素呼吸能力に目をつけ、接近することからはじまりました。
古細菌はミトコンドリアの先祖の酸素呼吸能力と代謝産物のおこぼれをもらう生活をはじめます。
しかしある時点を境に、古細菌がミトコンドリアの先祖である細菌を飲み込んでしまいます。
古細菌にとっては、内部に取り込んでしまった方が都合がよかったからです。
ただこの段階では、飲み込んだ古細菌と飲み込まれたミトコンドリアの先祖の独自性が強く、現代の私たちの細胞のように両者が完璧に適合しているわけではありませんでした。
時には内部で栄養を巡る競争や代謝サイクルの不協和が発生し、共倒れに陥ることも多かったのです。
この非適合性は、古細菌がミトコンドリアの遺伝子を取り込んで核膜を持ち始めた後もしばらく続きます。
そこで両者は、とりあえずの「妥協」を行うことになりました。
それが多核化です。
1つの細胞に1つの核(古細菌の遺伝子)しかない場合、選択肢が限られているため、適合か死のどちらかしか選べませんでした。
しかし1つの細胞に複数の核が存在する場合、たとえ数個の核がミトコンドリアとの適合に失敗しても、残った核の遺伝子によって補うことが可能になります。

そのため研究者たちは、上の動画のように、私たち真核生物の先祖には多核細胞の時期があったと考えました。
現在の真核生物の全ての系統に、多核細胞を作れる種が散在しているのは、根元となる祖先がミトコンドリアとの適合を求めて多核化していたからというわけです。
問題は細胞分裂能力でした。
多核化がいくら有効な解決手段だったとしても、適切な細胞分裂なくしては厳しい自然界を生き残ることはできません。
真核生物の先祖は無数の核を持つ状態で、どうやって細胞分裂を行っていたのでしょうか?


























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