羽の表面には光反射防止のナノ構造とワックス層があった
ツマジロスカシマダラがもつ光反射防止システムは1つだけではありません。
羽の表面にある「反射防止のナノ構造」も透明性を作り出していました。
例えば「コンフサトンボマダラ(学名:Methona confusa)」の羽はツマジロスカシマダラと同じ成分で構成されていますが、表面はフラットであり、光に対して高い屈折率をもちます。
そのため羽は「やや透明」です。
しかし、ツマジロスカシマダラの表面には細かい凹凸があり、これによって光の反射が制限されます。
羽に当たる光が、そのまま背後に通過するようになっているのです。
加えて、ツマジロスカシマダラの羽の表面には特殊なワックス層があり、反射防止特性をさらに向上させていました。
つまりツマジロスカシマダラは、3種類の反射防止構造のおかげで、非常に高い透明度を獲得していたのです。
私たち人間は、透明な材料を作ったり、反射防止コーティングを見つけたりするたびに大喜びしてきましたが、蝶はずっと前からその方法を知っていたのですね。
ポメランツ氏が指摘するように、「自然界に存在するナノ構造へのさらなる理解は、今後も私たちの技術を向上させていく」でしょう。