ウイルスに感染する細胞を指定する
ウイルスを用いた細胞の遺伝子書き換えは、現代の生物工学の基礎技術となっています。
新たな遺伝子をあらかじめウイルス内部に詰め込み、細胞に感染させることで遺伝子を組み込むのです。
しかし既存の方法では、感染可能な細胞が複数ある場合、ウイルスは相手を区別しないため、細かな制御はできませんでした。。
ですがフライブルク大学の研究者たちには、この状況を打破する秘策を開発。
鍵となったのは、シロイヌナズナの細胞に含まれる「赤い光に反応して結合するタンパク質」でした。
白い小さな花で知られるシロイヌナズナは、私たちにとって見慣れた植物です。
実はシロイヌナズナは植物実験の王者であり、遺伝子の解明も進んでいます。
研究者たちは今回、そんなシロイヌナズナの光合成遺伝子に含まれる、「PIF」と「phyB」と呼ばれる2つの赤い光に反応して結合するタンパク質に着目しました。
ウイルスの感染は表面にある「スパイク」と呼ばれる部分が、細胞表面にある特定のタンパク質と結合することから始まります。
さきほどの「PIF」と「phyB」のうち、1つをウイルスに、もう1つを細胞にくっ付けることができれば、赤い光で照らした細胞にだけウイルスを感染させられる可能性があります。
仮説を証明するために早速、研究者たちは実験にとりかかりました。