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神秘的「バイカル禅」の再現実験
ロシアのバイカル湖などでは、細い氷の台座に乗っかった不思議な石が見つかることがあります。
これは、日本庭園に飾られる石に似ているということから、海外では「バイカル禅(Baikal Zen)」あるいは「禅石現象(”Zen stone” phenomenon)」という呼び方をされているようです。
このような不思議な現象が起きる理由については、予想はされていても実証されたことがこれまでありませんでした。
しかし今回、クロード・ベルナール・リヨン 1大学 (Université Claude Bernard Lyon 1)とCNRSの研究チームが現象の理論を発見し、実験室で現象の再現に成功したのです。
再現された実験の動画がこちらです。
この動画を見ると分かるように、バイカル禅は石が氷に持ち上げられて細い台座に乗っているわけではなく、石の下の氷だけが残って回りの氷がすべて溶けてなくなることで形成されています。
これは固体から気体に直接形態変化を起こす「昇華」に起因する現象なのだと研究者は説明します。
自然では太陽光の熱で昇華する氷を、石の影が保護することで、石の下の氷だけが残り、回りの氷が消えてしまうため不思議な石の台座が形成されるのです。
そんな簡単な原理なら、すぐにも解明されていて良さそうに感じますが、この現象が起きるにはいくつかの条件が必要なようです。
研究者によると、これは影を作る石の大きさと石の持つ熱伝導率が重要な要因となり、また液体の水ではなく空気の対流が重要だったと語っています。
実験では花崗岩の下には、氷の台座はできず、ポリスチレン(発泡スチロール)だと下にうまく氷の台座ができたといいます。
花崗岩は熱伝導率が高く、そのため熱が氷に伝わり台座も溶けて結局沈んでしまいます。
熱伝導率の低い素材の場合、氷は周囲の温かい環境から保護されて残るのです。
また、薄い石の方が厚い石より台座が形成されやすいこともわかりました。
これは薄い石の方が環境と接する表面積が少なくなるため、熱の吸収が少なくてすむためです。これはCPUの熱を吸収するフィンの原理と同じことでしょう。
また実験では影を作る石の大きさは最低でも10cm以上の幅がないと駄目だったといいます。
実験と自然環境では、こうした条件には誤差があるでしょうが、こうした諸条件が複雑に絡むため、これまで単純な実験方法ではなかなかうまく氷の台座が形成されなかったのでしょう。
自然現象はときに、人為的な実験よりも複雑で神秘的な状況を生み出しているようです。