AR技術が踏む次のステップは?
私たちはVR(仮想現実)ゴーグルによって仮想世界へ旅立つことができます。
そしてAR(拡張現実)ゴーグルを利用すれば、現実世界と仮想世界を融合させることも可能です。
現実世界である自分の部屋や道に、ゲームのキャラクターを登場させたり、他の人には見えないスクリーンを作り出して映画を楽しんだりできるのです。
最近では、軽量で普通のメガネと見た目がほとんど変わらない「ARグラス」も開発されています。
いずれはメガネや軽いゴーグルをかけているだけで、誰かと電話したり、店の棚に並んでいる商品の詳細情報を表示させたり、映画を楽しんだりすることが当たり前の時代が来るはずです。
しかし課題もあります。
そのARグラスを操作するために「別のデバイスが必要になる」ということです。
もちろん音声入力は可能ですが、操作がすべて音声操作というのは現実的ではありません。また音声認識の精度、騒音による影響、プライバシーの問題、多言語・方言への対応不足など、ユニバーサルデザインを考える場合にも様々な限界があります。
せっかくコンパクトなウェアラブルデバイスによってARがハンズフリーな技術へと近づいたのに、操作の利便性を求めると、「ハンズフリーであるというメリット」を捨てなければいけないのです。
実際、スマホなしで電話したり映画を見たりできても、結局のところ、別の操作デバイスを持つ必要があるのであれば、「別にスマホでいい」と感じるかもしれません。
これの解決策の1つには、SF映画に出てくるような「空間をインターフェースにする」技術が該当するかもしれません。
しかしこれは現状では技術的に実現が困難です。
まずデバイス側に触れる位置の深度を認識させることが難しいため、ボタンを押しているのか、ボタンに触れずに指を移動しているだけなのかを解釈させることが上手くできません。
また視界と手の位置を上手く一致させることも難しく、触れた感覚がないため、ものすごく大きなボタンを押すことはできるでしょうが、細かな操作をすることができません。
特に触れている感覚がないというのは、操作する側に取ってはかなり使いづらいデザインです。
タッチスクリーンが広まった現代で、物理ボタンの復活が一部始まっていることを考えると、操作した時の触覚が大切であることは十分理解できます。
では、AR技術の発展において、次の順当な着地点はどこになるでしょうか。
それは、モリン氏ら研究チームの「てのひらをタッチスクリーンにする技術」かもしれません。
手のひらにARで操作用のタッチスクリーンを投影し、まるでスマホを扱うかのように、指で操作し、ARグラスやARゴーグルのコンピューターに指示を送るというのです。
「指」と「てのひら」の両方から触覚情報が得られるので、従来のタッチスクリーンよりも使い心地が良いかもしれません。
この技術であれば、ユーザーはARグラス以外にデバイスを持ち運ぶことも身に着ける必要もないでしょう。
では、この新技術がどのように機能するのか、詳細は次項で紹介します。