歴史か、未来か――都市開発のジレンマに大胆な解決策
都市が発展していく過程で、古い建物の取り壊しはしばしば避けられない工程の一つとされてきました。
特に交通インフラや地下空間の整備を行う際には、地上の構造物が障害になることもしばしばです。

一方で、歴史的価値の高い建築物を保存しようとする声も根強く存在します。
世界中の都市が近代化と歴史保全の間で揺れるなか、いくつかの例では、建物全体を丸ごと移設する手段が取られてきました。
アメリカでは教会の移設、ヨーロッパでは古城の一時移転などが行われています。
しかし、今回中国・上海で行われているプロジェクトは、そのスケールも技術力も前例を見ないものです。
舞台となるのは、上海・静安区に位置する「華厳里」という歴史地区。

ここには1920〜30年代に建てられた「石庫門」様式のレンガと木造の3棟の建物があり、それぞれが中国近代の生活文化と建築様式を象徴する存在です。
この地域は、地下鉄2号線、12号線、13号線の接続を含むインフラ整備と、地下商業空間の建設のために再開発が必要となっていました。
しかし、華厳里はそのままにしておきたい――。
そこで採用されたのが、「ロボットで街区ごと建物を一時的に移動させ、再開発後に元の位置に戻す」という画期的な方法だったのです。