「脳の記憶回路」を壊すジャンクフードの作用
まず、今回の研究で着目されたのは、脳の記憶の司令塔ともいえる「海馬」です。
海馬は、体験したことを記憶として保存したり、必要な情報を呼び出したりする重要な役割を担っています。
研究チームは、マウスにハンバーガーやフライドポテトに代表されるような「高脂肪・高カロリー」のジャンクフードを与え、その脳の変化を詳しく観察しました。
その結果、海馬の中にある「CCK介在ニューロン」と呼ばれる特殊な神経細胞の集団が、ジャンクフードを食べた直後から“異常に活性化”してしまうことが判明したのです。

それはわずか4日間という短期間の食事でも、記憶を支える神経回路に強いダメージが現れるという、驚くべき結果でした。
この異常は、脳が「グルコース(血糖)」を十分に利用できなくなることに起因していました。
高脂肪食を続けると、脳は糖をうまく取り込めなくなり、エネルギーが不足します。
その結果、CCK介在ニューロンは「非常事態」と認識して過剰に働き始め、逆に記憶形成に必要な神経ネットワークを乱してしまうのです。
研究ではさらに、脳細胞のエネルギー利用をコントロールする「PKM2」というタンパク質が、この現象に深く関わっていることも発見されました。