薬を飲むときは「右に傾いた姿勢」を維持すべき
鎮痛薬などの錠剤を飲んでから効果が現れるまでには、ある程度の時間が必要です。
なぜなら、錠剤が胃に流れた後、幽門(ゆうもん)と呼ばれる消化の際に開閉する弁を通過して腸に到着し、そこから血流に吸収される、という長い道のりを経なければいけないからです。
では、この経口薬の消化吸収をできるだけ早める方法はあるのでしょうか?
画像から分かる通り、胃は左右対称ではありません。
そのため、経口薬を飲むときの姿勢が消化吸収に影響を与える可能性があります。
そこでミタル氏ら研究チームは、34歳男性のボディスキャン画像をもとに作成した「胃のコンピューターモデル」を使って、薬を飲むときの4つの姿勢で、消化吸収の速度がどのように変化するかテストしました。
このモデルでは、流体力学と生体力学の観点から、錠剤が胃から十二指腸(栄養の吸収が始まる小腸の最初の部分)に排出されるまでの速度をシミュレーションしました。
テストされた4つの姿勢は次の通りです。
- 直立:まっすぐに立った状態。もしくは正座
- 右傾:右に寄りかかった状態。もしくは体の右側を下にして寝た状態
- 左傾:左に寄りかかった状態。もしくは体の左側を下にして寝た状態
- 後傾:後ろに傾いた状態。もしくは仰向けになって寝た状態
その結果、シミュレーションでは右傾姿勢で薬を飲むと、胃の一番深いところに薬が入り込み、直立姿勢で薬を飲むよりも、薬が2倍早く「溶ける」と判明。
また左傾姿勢だと、直立姿勢に比べて薬の吸収に最大5倍の時間がかかることも分かりました。
ミタル氏は、「高齢者や座りっぱなしの人、寝たきりの人にとって、右に傾いているか、左に傾いているか、という違いは大きな影響を与えます」と述べています。
ちなみに今回の結果は、1988年に発表されたアメリカ・ユタ大学(The University of Utah)の「右側に横たわると、胃が食物を腸に排出する速度が向上する」という報告や、2008年に発表されたドイツ・ケルン大学(University of Cologne)の「右に傾いて座ったり立ったり寝転んだりすると経口薬の吸収が促進される」という報告とも合致しています。
ですから、私たちが「一刻も早く痛みを和らげたい」と感じて鎮痛薬を飲む場合、体を右に傾けながら飲み、その状態をしばらく保つと良いでしょう。