名作『トゥームレイダー』リマスター版で、声優の声を模倣した「生成AIボイス」が無断で使用される
『トゥームレイダー』シリーズは、1996年にイギリスで誕生して以来、世界的な人気を誇るアクションアドベンチャーゲームです。
主人公のララ・クロフトは、遺跡を探検し秘宝を追い求めるトレジャーハンター。
三人称視点での探索や謎解き、アクション要素を組み合わせたゲーム性が画期的で、ゲームの歴史を語るうえで外せない名作として知られています。
シリーズを通じて、操作性やグラフィック、ストーリーは進化し続け、2013年以降は現代的なリブート版も人気を集めています。
2024年には初期作のリマスター版が発売され、2025年2月にはIV~VIリマスター版も発表されました。
そして、そのリマスター版のアップデートをきっかけに、フランス語版のファンが異変に気づきました。
「ララの話し方が不自然だ」とSNSやコミュニティで大きな話題となり、その違和感の正体を突き止めようとする動きが広がったのです。
長年フランス語版ララ・クロフトの吹き替えを担当してきたフランソワーズ・カドルさんは、まさにララそのものと言える存在です。
彼女の豊かな表現力がキャラクターの魅力を支えてきました。
ところがアップデート直後から、カドルさん自身にもファンから「声がおかしい」という連絡が相次ぎました。
カドルさんは音声を確認し、「自分の声がAIによって無断で模倣・利用されている」と気づきます。
実際にゲーム内には、AIで生成された不自然な音声が混ざり、フランス語の文法的な誤りや、感情のこもらない話し方が目立っていました。
カドルさんは「私の声は私のもの。無断で使う権利は誰にもない」と強く訴え、すぐにパリの弁護士に相談。
運営会社に対して、公式謝罪と損害賠償を求める法的措置に乗り出しました。
この事件を受けて、開発・配信元のAspyr(アスパイヤー)は、「生成AIによる音声がアップデートに含まれていた」と公式サイトで認め、「すべてのAI音声コンテンツを削除した」と発表しました。
しかし、この事件を引き起こした根本的な問題は、AI生成ボイスが削除されたからといって解決したわけではありません。