画像
トゥルカナ族/ Credit: en.wikipedia
biology

「常人なら病気になる食習慣」に適応進化したトゥルカナ族とは?

2025.10.08 12:00:18 Wednesday

もし毎日の食事のほとんどを「肉」と「ミルク」で済ましたら、どんな未来が待っているでしょうか。

おそらく多くの人は、すぐに健康を損ない、腎臓や血管の病気に悩まされるはずです。

しかし、そんな「極端な動物性食生活」を何世代にもわたって続け、むしろ健康を保ってきた民族がいます。

ケニア北西部の過酷な砂漠地帯に生きる遊牧民「トゥルカナ族」です。

彼らの肉中心の食事は、私たち常人なら即病気になりそうな“危険なメニュー”にも関わらず、なぜ彼らだけが元気に暮らせるのでしょうか?

研究の詳細は2025年9月18日付で科学雑誌『Science』に掲載されています。

Genetic study of nomadic herders in Kenya shows what it takes to adapt to desert living https://news.berkeley.edu/2025/09/18/genetic-study-of-nomadic-herders-in-kenya-shows-what-it-takes-to-adapt-to-desert-living/ Turkana People Are Evolving to Thrive on a Diet That Would Make Others Ill https://www.sciencealert.com/turkana-people-are-evolving-to-thrive-on-a-diet-that-would-make-others-ill
Adaptations to water stress and pastoralism in the Turkana of northwest Kenya https://www.science.org/doi/10.1126/science.adv2467

トゥルカナ族の極端な動物性食生活

アフリカ大陸の東部、ケニア北西部の灼熱の大地。

ここに住むトゥルカナ族は、世界でも最も乾燥し、植物がほとんど育たない土地で暮らしています。

彼らの食事の中心は、なんと70〜80%が「動物性食品」

主食は、ヤギやラクダのミルク、肉、そして血――これら家畜から得られるエネルギーに、日々の健康が支えられています。

生野菜や果物、穀物といった一般的なバランス食はほとんど口にしません。

この食生活は、もし現代人が真似したら、腎臓や肝臓への負担、コレステロールや尿酸値の上昇、生活習慣病のリスク増大など、「健康を壊す食事」として医師に全力で止められるでしょう。

画像
トゥルカナ族/ Credit: en.wikipedia

しかし、実際のトゥルカナ族はどうでしょうか。

米カリフォルニア大学バークレー校(UC Berkeley)の研究チームは、遊牧生活を送るトゥルカナ族約300人から尿や血液サンプルを採取し、生活や健康状態を調査しました。

その結果、彼らの多くが1日わずか1.5リットルしか水を飲んでいない(※)にも関わらず、慢性的な脱水状態でありながらも「生活習慣病や腎臓疾患がほとんど見られない」という事実が明らかになったのです。

(※ この地域で生き残るために必要とされる水の4分の1程度)

トゥルカナ族の食生活の約7〜8割は動物性タンパク質で占められており、これは世界保健機関(WHO)が“心疾患リスク”と警告する水準の3倍以上。

しかもプリン体の多い肉を常食しているにもかかわらず、「痛風」などの病気も一般的には見られません。

さらに日陰がほとんどなく、50℃に達することもある砂漠で毎日家畜の世話をし、水場を求めて長距離を歩き続ける。

そんな「極限環境」に適応して、体調を大きく崩すこともないというのです。

このパラドックスの背後に何があるのでしょうか?

次ページトゥルカナ族の遺伝子の適応進化

<

1

2

>

人気記事ランキング

  • TODAY
  • WEEK
  • MONTH

Amazonお買い得品ランキング

スマホ用品

生物学のニュースbiology news

もっと見る

役立つ科学情報

注目の科学ニュースpick up !!