トゥルカナ族の極端な動物性食生活
アフリカ大陸の東部、ケニア北西部の灼熱の大地。
ここに住むトゥルカナ族は、世界でも最も乾燥し、植物がほとんど育たない土地で暮らしています。
彼らの食事の中心は、なんと70〜80%が「動物性食品」。
主食は、ヤギやラクダのミルク、肉、そして血――これら家畜から得られるエネルギーに、日々の健康が支えられています。
生野菜や果物、穀物といった一般的なバランス食はほとんど口にしません。
この食生活は、もし現代人が真似したら、腎臓や肝臓への負担、コレステロールや尿酸値の上昇、生活習慣病のリスク増大など、「健康を壊す食事」として医師に全力で止められるでしょう。

しかし、実際のトゥルカナ族はどうでしょうか。
米カリフォルニア大学バークレー校(UC Berkeley)の研究チームは、遊牧生活を送るトゥルカナ族約300人から尿や血液サンプルを採取し、生活や健康状態を調査しました。
その結果、彼らの多くが1日わずか1.5リットルしか水を飲んでいない(※)にも関わらず、慢性的な脱水状態でありながらも「生活習慣病や腎臓疾患がほとんど見られない」という事実が明らかになったのです。
(※ この地域で生き残るために必要とされる水の4分の1程度)
トゥルカナ族の食生活の約7〜8割は動物性タンパク質で占められており、これは世界保健機関(WHO)が“心疾患リスク”と警告する水準の3倍以上。
しかもプリン体の多い肉を常食しているにもかかわらず、「痛風」などの病気も一般的には見られません。
さらに日陰がほとんどなく、50℃に達することもある砂漠で毎日家畜の世話をし、水場を求めて長距離を歩き続ける。
そんな「極限環境」に適応して、体調を大きく崩すこともないというのです。
このパラドックスの背後に何があるのでしょうか?