洞窟で見つかった“奇跡”のミイラ
今回、発見の舞台となったのは、サウジアラビア北部に広がるラウガ洞窟ネットワークです。
サウジアラビアの野生生物ナショナルセンター(NCW)の研究チームがこの洞窟の奥深くで発見したのは、7体もの「自然ミイラ化したチーター」の遺体、さらに54体分に相当する骨格、そして彼らが食べていたと考えられる獲物の骨でした。
最も古い骨格は約4223年前、最も新しいミイラ個体でも約127年前のものでした。
ミイラ化した遺体は、肉や皮膚がほぼ完全な形で保存されており、まるで昨日まで生きていたかのようなリアルさです。

この保存の秘密は「洞窟環境」にあります。
乾燥していて温度や湿度がほぼ一定という特殊な条件が、細菌による腐敗を防ぎ、偶然にもミイラ化をもたらしたのです。
洞窟の中では、現在でもオオカミが出入りしている様子がカメラトラップで確認されていますが、チーターのような大型ネコ科が洞窟を使う例は、現生の個体ではほとんど報告がありません。
では、なぜチーターたちは洞窟に入り、そして出られなくなったのでしょうか?
滑りやすい急斜面を降りて洞窟内に入り込み、そのまま出られなくなって命を落とした可能性が考えられています。
今回の発見は、絶滅種を含むチーター類の生態の多様性や、環境適応力の一端を示す貴重な証拠となりそうです。