漢方薬「防風通聖散」が脂肪燃焼を再点火させる仕組みを解明
漢方薬「防風通聖散」が脂肪燃焼を再点火させる仕組みを解明 / Credit:Canva
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漢方薬「防風通聖散」が脂肪燃焼を再点火させる仕組みを解明

2025.11.10 22:00:44 Monday

日本の近畿大学薬学総合研究所と小林製薬の共同研究により、漢方薬の防風通聖散(ぼうふうつうしょうさん)が、年齢とともに落ちにくくなったお腹や肝臓の脂肪を減少させる可能性が示されました。

研究では、高脂肪食を与えられた加齢マウスに防風通聖散エキスを2か月間投与したところ、体重増加が約半分(14.1gから7.1gへ減少)に抑えられ、肝臓に溜まった脂肪も減少しました。

さらに肝機能の指標となるALTという酵素の数値が約64%改善したほか、年齢とともに低下してしまう脂肪燃焼スイッチ(UCP1)の低下が有意に抑制されました。

この結果は、加齢によって起こる「年齢太り」に対して、防風通聖散が新たなアプローチとなる可能性を示しています。

研究内容の詳細は、2024年4月25日に『Journal of Natural Medicines』にて発表されました。

漢方薬「防風通聖散」が加齢による内臓脂肪蓄積を抑える効果を発見 令和7年度生薬学会論文賞を受賞 過剰な内臓脂肪や肝臓の異所性脂肪へのアプローチ https://newscast.jp/news/6729798
Ameliorative effect of bofutsushosan (Fangfengtongshengsan) extract on the progression of aging-induced obesity https://doi.org/10.1007/s11418-024-01803-4

肥満改善を目指す伝統薬の科学的挑戦

肥満症の改善を目指す伝統薬の科学的挑戦
肥満症の改善を目指す伝統薬の科学的挑戦 / Credit:Canva

「若い頃は多少食べ過ぎてもすぐ痩せたのに、今はお腹周りがなかなか凹まない…」そう感じたことはありませんか。

年齢とともに代謝や脂肪燃焼の能力が低下するのは、多くの人にとって「あるある」の悩みです。

特に、お腹にたまる内臓脂肪は加齢とともに蓄積しやすく、放置すると糖尿病や脂質異常症といった生活習慣病につながります。

さらに厄介なのは、脂肪が本来の貯蔵場所以外、たとえば肝臓にも蓄積してしまうことです。

これは「異所性脂肪」と呼ばれる状態で、肝臓に脂肪がたまると肝機能を悪化させ、いわゆる脂肪肝の原因となり、健康リスクが一層高まります。

こうした加齢による内臓脂肪や肝臓脂肪の増加を抑える方法がもしあるなら、多くの人が知りたいと思うでしょう。

そこで注目されたのが、古くから肥満症の治療に使われてきた漢方薬「防風通聖散」です。

防風通聖散(ぼうふうつうしょうさん)は、日本で広く使われている代表的な漢方薬の一つです。

名前の「防風」は外からの刺激に負けにくくするという意味で、「通聖」は「滞りを通して清らかにする」という考え方を表しています。

現代の言葉で言えば、体の中にたまった余分な熱や水分、老廃物の渋滞を取り除き、体のめぐりを整える薬というイメージです。

現在では飲みやすいエキス顆粒や錠剤として製品化され、医療用・一般用の両方で販売されています。

その中身は18種類の生薬(しょうやく)を組み合わせたブレンドで、たとえば連翹(れんぎょう)、荊芥(けいがい)、大黄(だいおう)、山梔子(さんしし)、麻黄(まおう)、当帰(とうき)、芍薬(しゃくやく)、甘草(かんぞう)などが含まれています。

肥満症の改善を目的とした漢方薬として広く知られていますが、その効果のメカニズムにはまだ解明されていない部分も多く残っています。

今回の研究では、研究者たちがこの防風通聖散を科学的な手法で評価し、実際に体の中でどのように働くのかを詳しく確かめました。

次ページ古くて新しい漢方薬の科学的再評価

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