地球には星々を渡る恒星間天体の衝突が起きやすい地域が存在する
地球には星々を渡る恒星間天体の衝突が起きやすい地域が存在する / IMAGE COURTESY OF M. KORNMESSER/ESO
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地球には星々を渡る恒星間天体の衝突が起きやすい地域が存在する

2025.11.17 20:00:26 Monday

太陽系の外から飛んでくる「星間物体(太陽系の外を旅する天体)」は、どうやら地球のどこにでも同じように落ちるわけではありませんでした。

アメリカのミシガン州立大学(MSU)で行われた研究によって星間物体が地球に命中するコースを調べたところ、地球の特定の地域に衝突しやすい傾向があることが示されました。

また時期によっても衝突する星間物体の速度や数は異なり、春には衝突する星間物体の速度は大きく、冬には衝突頻度が増加することも示されました。

さらに落ちる場所も赤道付近、とくに北半球寄りがわずかに狙われやすいという“偏りだらけ”の地図が浮かび上がったのです。

しかしなぜ季節によって星間物体の速度や衝突頻度が上がるのでしょうか?

研究内容の詳細は2025年11月5日に『arXiv』にて発表されました。

The Distribution of Earth-Impacting Interstellar Objects https://doi.org/10.48550/arXiv.2511.03374

一撃が重い恒星間天体の衝突頻度に地域差はあるのか?

一撃が重い恒星間天体の衝突頻度に地域差はあるのか?
一撃が重い恒星間天体の衝突頻度に地域差はあるのか? / Credit:Canva

SF映画には、巨大な隕石(いんせき)が地球に衝突して危機をもたらすという定番のシーンがあります。

しかしその隕石が、「太陽系の外から来た石ころ」、つまり他の恒星の惑星系からやってきた天体だとしたらどうでしょうか?

このような「恒星間天体」というものは、太陽系内の天体(小惑星や彗星)とは違って、まったく別の星の惑星系で生まれて、宇宙空間を長い間さまよった末に太陽系に入ってきます。

少し前までなら、そんな「宇宙の放浪者」が地球に落ちるなんてあまり考えませんでしたが、近年この考えをひっくり返す出来事が起きました。

それは2017年に現れた「オウムアムア」という奇妙な天体の発見です。

オウムアムアは葉巻のように細長い形をした物体で、太陽系を通過した後、二度と戻ることなく宇宙の彼方へ飛び去っていきました。

科学者はすぐに、この奇妙な訪問者が太陽系外からやって来た「恒星間天体」だと確認しました。

さらに2019年にはボリソフ彗星、そして2025年には3I/ATLASと呼ばれる物体も確認され、ここ数年だけで恒星間天体が相次いで発見されている状況です。

これらの観測は、遠い恒星系からやってくる「宇宙の迷い人」が稀にではなく、少なくとも数年の間に立て続けに太陽系を通過することがある、という現実を示しています。

地球が46億年前に生まれてからの長い歴史の中で、こうした星間物体が地球に命中したとしてもまったく不思議ではありません。

またその影響も、場合によっては太陽系内の隕石衝突よりも甚大なものになります。

コラム:なぜ星間天体の一撃は重いのか?

「地球に隕石がぶつかる」と聞くと、多くの人が思い浮かべるのは太陽系の中を回っている小惑星や彗星でしょう。でも、2017年のオウムアムア、2019年のボリソフ彗星、そして2025年の3I/ATLASの登場で、「太陽系の外から飛んでくる石」は、一発の重さ(破壊力)という意味ではかなりヤバい相手だということが見えてきました。まず押さえておきたいのは、スピードが2倍になるとエネルギーは4倍、3倍になると9倍となる点です。つまり「ちょっと速い」は、「ちょっと」では済みません。

では、太陽系内の普通の小惑星と、星間天体はどれくらいスピードが違うのでしょうか。地球に落ちてくる典型的な小惑星の衝突速度は、秒速およそ17~25キロメートル(時速で約6万〜9万キロメートル)程度と言われています。これだけでも十分に「超高速弾」ですが、星間天体はここからさらにギアを上げてきます。星間天体はもともと別の恒星系を回っていたか、あるいは星と星の間を自由に飛び回っている存在で、太陽の重力にしっかり捕まっていません。そのため、太陽系に入ってきたときの“元の速さ”が高いことが多く、地球に対する衝突速度は秒速42〜72キロメートル(時速15万~26万キロメートル)程度になり得ると考えられています。ざっくり言えば、太陽系内の典型的な小惑星より2倍〜3倍くらい速い可能性があり、その運動エネルギーも4~9倍も高くなっています。そして運動エネルギーが高ければ地球の地殻に対するダメージも大きく、環境への影響も甚大になります。

しかし残念ながら、これまで星間由来だと明確に証明された隕石やクレーターは見つかっていません。

見つかっているのは隕石に混ざる微小な「星のかけら」や、宇宙探査機やレーダーが捉えた細かな「星間塵(じん)」と呼ばれる粒子程度です。

こうした証拠が少なすぎるため、「星間物体が地球にぶつかる確率」や「どれくらい危険なのか」を具体的な数値として算出するのは非常に困難でした。

そこで研究チームが取ったのが「まずはどの方向から来やすく、どの季節に衝突が多くなり、地球上のどの地域に落ちやすいのかという『パターン(分布)』を先に知ってしまおう」という試みです。

果たして星間物体の攻撃パターンに本当に『クセ』など存在するのでしょうか?

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