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空気から水生成を劇的に加速する超音波装置。※イメージ / Credit:Canva
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「空気から水生成」を劇的に加速する超音波装置を開発

2025.11.21 11:30:08 Friday

科学者たちはこれまで「空気から水を生成する装置」を開発してきました。

しかし、そこには決定的な弱点がありました。

空気中の水分を吸い込む材料自体はすでにたくさんありますが、いったん吸い込んだ水を取り出すには加熱などが必要で、水を抽出するのに何時間も待たなければならなかったのです。

この問題に対し、アメリカのマサチューセッツ工科大学(MIT)の研究チームは、「水を蒸発させる」のではなく「超音波で揺さぶって水を振り落とす」という新しい方法を提案しました。

振動する装置の上に水を吸った“スポンジ状の吸水材料”を載せると、わずか数分で水がしずくとなって飛び出してくるのです。

この研究成果は、2025年10月18日付の学術誌『Nature Communications』に掲載されました。

Ultrasonic device dramatically speeds harvesting of water from the air https://news.mit.edu/2025/ultrasonic-device-dramatically-speeds-harvesting-water-air-1118
High-efficiency atmospheric water harvesting enabled by ultrasonic extraction https://doi.org/10.1038/s41467-025-65586-2

「空気から水生成」を劇的に早める超音波装置を開発!エネルギー効率は45倍

世界には、川も地下も乏しい乾燥地域が多く存在し、人々は慢性的な水不足に苦しんでいます。

その一方で、地球の大気中には膨大な量の水分が含まれています。

そのため、「空気から水を集める技術(Atmospheric Water Harvesting:AWH)」は、いろいろな場所で使える“身近な水源”として大きな期待を集めてきました。

AWHの主なアプローチは大きく2つに分かれます。

1つは、冷蔵庫のように空気を冷やして水滴を作る「冷却方式」。

もう1つは、水をよく吸う多孔質の材料に空気中の水を吸わせ、あとから加熱して水だけを取り出す「吸着・脱離方式」です。

今回の研究が対象にしたのは後者です。

この方式は装置を小型化しやすく、家庭や小さなコミュニティでの利用に向くと考えられていますが、大きな弱点があります。

吸収した水を抽出するのに、たくさんの熱と時間が必要になることです。

従来の乾燥剤の中には水を手放す温度が60〜80℃、ものによっては160℃近くにも達するものがあります。

実際の装置では、熱として加えたエネルギーのかなりの部分が材料や周囲の空気を温めることに使われ、肝心の水の蒸発には使われません。

そこでMITの研究チームは、この状況を根本から変えるために、新しい発想にたどり着きました。

「水を蒸発させる」のではなく、「超音波で水分子を揺さぶって解放させる」というアイデアです。

研究ではスポンジ素材に空気中の水を吸わせた後、超音波装置の上に置いて振動させました。

すると、従来の装置では数十分から数時間かかるのに対し、超音波装置を用いるなら、わずか数分で水が滴として飛び出すことが確かめられました。

この方式はエネルギー効率においても圧倒的であり、必要なエネルギーは従来方式の約45分の1という超高効率でした。

これは、熱方式では避けられない“蒸発そのものに必要なエネルギー”を使わないためです。

では、この新しい超音波装置は、どのように水を抽出しているのでしょうか。

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