宇宙を単独で旅する土星サイズの浮遊惑星を発見――距離と質量の初測定にも成功
宇宙を単独で旅する土星サイズの浮遊惑星を発見――距離と質量の初測定にも成功 / Credit:Canva
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宇宙を単独で旅する土星サイズの浮遊惑星を発見――距離と質量の初測定にも成功

2026.01.06 20:00:05 Tuesday

中国の北京大学(PKU)で行われた研究によって、地球から約1万光年離れた距離に恒星の周りを回らず、孤独に宇宙を旅している土星と同じくらいの重さの浮遊惑星が存在することが発見されました。

これまで浮遊惑星の存在は知られていたものの、距離と質量については正確に観測することは困難だったこともあり、両者の正確な観測に成功した今回の研究成果は画期的なものと言えます。

過去の研究によれば、このような恒星系から飛び出した浮遊惑星は恒星の数と同等かそれ以上存在すると推定する研究もあります。

もしこうした「星なき惑星」が天の川銀河に数十億から数兆も存在するとしたら、私たちがこれまで思い描いてきた「惑星」のイメージは大きく塗り替えられることになるかもしれません。

研究内容の詳細は2026年1月1日に『Science』にて発表されました。

Joint ground- and space-based observations reveal Saturn-mass rogue planet https://www.eurekalert.org/news-releases/1111054
A free-floating-planet microlensing event caused by a Saturn-mass object https://doi.org/10.1126/science.adv9266

浮遊惑星の重さは誰も知らなかった

浮遊惑星の重さは誰も知らなかった
浮遊惑星の重さは誰も知らなかった / Credit:Canva

惑星にも孤独な放浪者がいるのかもしれない」──そんな空想をしたことがある人は多いと思います。

私たちが教科書で習う惑星は、太陽のような恒星の周りをぐるぐる回る「付き人」のような存在です。

ところが宇宙には、その恒星から切り離されて、暗闇の中をひとりで旅している“はぐれ惑星”がいると考えられています。

コラム:実は浮遊惑星の数はめちゃめちゃ多い

天の川銀河(銀河系)には、だいたい1000億〜4000億個くらいの恒星があると言われています。一方で浮遊惑星は「数十億個~数兆個」レベルに達すると推測されています。数に大きな幅がある(特に上限が凄い)のは、数兆個という試算には月サイズの準惑星レベルのものも含めて考えているという要因もあるからです。ただ人類が拠点にするには準惑星レベルでも十分そうにも思えます。何光年も離れた隣の恒星との間には十個以上の浮遊惑星が中継地点として存在する場合もあるでしょう。これら浮遊惑星の多くは星系内の重力の押し合いなどによって星系から放り出されたものが多くを占めると考えられています。

このような放浪惑星は、自分ではほとんど光らない「真っ暗な物体」です。

そのため、どこにどれだけあるのかを直接見ることはとても難しくなります。

たまたま見つかったとしても、どのくらい遠くにいるのか、重さ(質量)がどれくらいなのかを測るのは簡単ではありません。

では、天文学者たちはこれまでどうやって「見えない惑星」を追いかけてきたのでしょうか。

そこで使われてきたカギが「重力マイクロレンズ現象」です。

重力マイクロレンズ現象とは、手前にある天体の重力によって、その奥に見えている星の光が曲がり、一時的に明るく見える現象のことです。

放浪惑星のように暗い天体でも、ちょうど背景の恒星と一直線に重なるとき、その重力がレンズのように働きます。

すると奥の星の光が少しだけ増幅され、なにもないはずの場所で星がふっと明るくなったように見えます。

言い換えると、浮遊惑星そのものが「一瞬だけ光を強める虫メガネ役」になってくれるのです。

この「一瞬の明るさの変化」をたくさんモニターすることで、天文学者たちは「ここを何かが横切った」という事実だけはつかむことができます。

しかし、明るさが上がって下がるという光のカーブだけでは、レンズになった天体がどれくらい遠くにいるのか、どれくらい重いのかを別々に決めることはできません。

その結果、過去10年ほどの観測から10個前後の放浪惑星候補が報告されてきましたが、「候補」にとどまり、直接の重さはわかっていませんでした。

そこで今回の研究チームは、ここに新しい“ひと手間”を加えました。

「見えない惑星」に、きちんとした体重計を当てられるようにしようとしたのです。

そのために使われたのが「視差(パララックス)」という仕組みでした。

視差とは、見る位置が変わることで、同じものが背景に対して少しずれて見える現象です。

私たちの両目も、右目と左目が少し離れた位置にあることで、世界を微妙に違う角度から見ています。

脳はこの左右の差を利用して、ものまでの奥行きや距離を感じ取っています。

今回の研究では、この「両目」を地球と宇宙空間に置き換えました。

地上の望遠鏡を片方の目、欧州宇宙機関(ESA)のガイア衛星をもう片方の目に見立てたのです。

ガイア衛星は地球から約150万〜200万キロメートルほど離れた場所を回っていて、人間の目の間隔とは比べものにならないほど遠くにある“二つ目”になります。

この二つの地点から同じマイクロレンズ現象を同時に観測すると、背景の星が一番明るくなる「ピークの時刻」が、地上と宇宙とでわずかにずれて見えます。

この時間のズレこそが、視差から距離を割り出すためのスケールの目盛りになります。

そして距離がわかれば、明るさの変化のしかたと組み合わせることで、「宇宙のどこを」「どれくらい重い放浪惑星候補」が通り過ぎたのかを、体重計で測るように求めることができるのです。

そしてついに2024年5月、チャンスが訪れました。

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