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生涯を通じてよく飲む人は大腸がんを発症するリスクが最大91%も高くなる

2026.02.08 12:00:51 Sunday

仕事終わりの一杯や、友人との飲み会。

お酒は私たちの生活において身近な存在であり、日本では古くから「酒は百薬の長」とも言われてきました。

しかし一方で、年齢を重ねるにつれて健康診断の結果や、将来の病気のリスクが気になりお酒は控えるようになったという方も多いのではないでしょうか。

特に、食生活の欧米化などに伴い日本でも罹患数が増加している「大腸がん」とアルコールの関係は、長年医療の現場でも注目されてきました。

これまでの研究で、飲酒が大腸がんのリスク要因となることは広く知られています。しかし、お酒の飲み方は、就職、結婚、加齢など、人生のステージとともに変化するものです。

「若い頃は深酒をしていたが、今は控えている」「健康のために最近お酒をやめた」といった、人生を通じた飲酒パターンの変化を考慮した研究はまだ少なく、それが将来の大腸がんリスクにどう影響するのかについては、十分なデータがありませんでした。

この身近な疑問に対し、米国の国立衛生研究所(National Institutes of Health: NIH)傘下の国立がん研究所(National Cancer Institute: NCI)に所属するケイトリン・P・オコネル(Caitlin P. O’Connell)氏らの研究チームが、一つの答えを提示しました。

研究チームは、約9万人の成人を対象に、18歳から現在に至るまでの飲酒について質問票で振り返って回答してもらい、そこから推定した「生涯の飲酒量」が、大腸がん、およびがんの前段階である大腸ポリープ(腺腫)の発生にどう関連するかを調査しました。

その結果、長年にわたる過度な飲酒は大腸がんのリスクを上昇させる一方で、飲酒をやめることでポリープの発生リスクを減らせる可能性が明らかになりました。

本記事では、私たちのお酒との付き合い方を見直す手がかりとなる、この最新の研究結果について詳しく解説します。

この研究の詳細は、2026年1月26日に学術誌『Cancer』でオンライン公開されています。

Association of alcohol intake over the lifetime with colorectal adenoma and colorectal cancer risk in the Prostate, Lung, Colorectal, and Ovarian Cancer Screening Trial https://doi.org/10.1002/cncr.70201

人生の「お酒の履歴書」から見えてきた、がんリスクと禁酒の効果

お酒と健康に関する研究の多くは、実はある共通の課題を抱えていました。

それは、調査時点での直近の飲酒量のみを評価しているものがほとんどだった、という点です。

しかし、私たちの生活を振り返ってみるとどうでしょうか。

学生時代や若い頃は頻繁に飲みに行っていたけれど、年齢とともに健康を意識してお酒を控えるようになった、という方は少なくないはずです。

あるいはその逆もあるかもしれません。

このように、人生を通じて変化する飲酒のパターンが、健康状態(特に今回の研究では大腸がんの発生)にどう影響しているのかは、これまでよく分かっていませんでした

そこで研究チームは、「生涯の飲酒量(Lifetime alcohol drinking)」という新たな視点に着目しました。

米国の「前立腺・肺・大腸・卵巣がんスクリーニング試験(PLCO)」に参加した約9万人の成人を対象に、18歳から現在に至るまでの飲酒の履歴を詳しく調査したのです。

具体的には、18歳から24歳、25歳から39歳、40歳から54歳、55歳以上という4つの年齢層に分け、それぞれの時期にビール、ワイン、蒸留酒をどのくらいの頻度で飲んでいたかを、質問票で振り返って答えてもらいました。

その情報から生涯の平均飲酒量を割り出し、大腸がんの発症を長期で追跡しました。

調査の結果、長年の飲酒習慣がもたらすリスクの傾向が浮かび上がりました。

生涯の平均飲酒量が「週に14杯以上(1日2杯以上)」の人は、週1杯以下の人と比べて、大腸がん全体のリスクが約25%高くなることが分かりました。

大腸がんは発生する場所によって、盲腸からS状結腸までの「結腸がん(Colon cancer)」と、その先の「直腸がん(Rectal cancer)」に分けられますが、多量飲酒者は特に直腸がんのリスクが約2倍と、高くなる傾向が見られました。

さらに研究チームは、飲酒量そのものだけでなく「人生のどの時期にどの程度飲んできたか」という飲み方のパターンにも注目しました。

その結果、成人期を通じて一貫して多量飲酒(女性は週14杯超、男性は週21杯超)を続け、現在もそのペースで飲酒している人は、成人期を通じて少量飲酒を続けた人に比べて、大腸がんのリスクが約91%高い傾向が示されたのです。

また、大腸がんの前段階である大腸ポリープ(腺腫:Adenoma)の発生リスクについても、興味深い結果が出ました。

ここでいう腺腫は良性の腫瘍ですが、大腸がんの多くは、この腺腫が時間をかけて変化する過程で発生すると考えられています。

研究ではこの大腸ポリープについても、過去にはお酒を飲んでいたものの、現在は飲酒をやめている人(元飲酒者)では、非常に初期段階の物が見つかる確率が約42%低いことが分かりました。

そのため飲酒習慣を見直すことで、がんそのものよりもさらに手前の段階で、腸に起こる変化が抑えられている可能性があります。

これらの結果は、長年の過度な飲酒がリスクを高める一方で、飲酒量を適度に保つこと、あるいは禁酒することによって、将来のがんのリスクを減らせる可能性を示唆しています。

次ページなぜアルコールは腸を蝕むのか?そのメカニズムと今後の課題

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