なぜアルコールは腸を蝕むのか?そのメカニズムと今後の課題
では、なぜアルコールは長年にわたって腸に影響を与え、がんを引き起こすのでしょうか。
アルコールを摂取すると、体内で分解される過程で「アセトアルデヒド(Acetaldehyde)」という物質が発生します。
このアセトアルデヒドは発がん性物質として知られており、大腸や直腸の細胞のDNAを直接傷つけ、突然変異を引き起こす可能性があるとされています。
さらに、アセトアルデヒドは体内の葉酸という栄養素の吸収を妨げます。
葉酸はDNAを正常な状態に保つ上で重要な役割を果たしているため、その異常はがん化のリスクに影響します。
また、アルコールは腸内の細菌のバランスを崩し、免疫機能の低下や慢性的な炎症を引き起こすことで、がんが発生しやすい環境を作ってしまうと考えられています。
ここで一つの疑問が浮かびます。
なぜ今回の研究では、「適度な飲酒」ががんのリスクを低下させるという結果が出たのでしょうか。
アルコールが体に悪いのであれば、少量でもリスクが上がるはずです。
この点について研究者たちは、動物実験などの結果から、適度な量のアルコールには炎症を抑えたり、DNAの損傷を減らしたりする作用がある可能性を挙げています。
しかし、もう一つの可能性も見過ごせません。
適度にお酒を楽しむ人々は、極端な深酒をする人々に比べて、食生活に気を配り、運動習慣があるなど、全体的に健康的な生活習慣を持っている傾向があります。
今回の研究では食事や運動などの影響も考慮して分析が行われましたが、データに表れにくい生活習慣の違いや社会経済的な要因が、結果に影響を与えた可能性は残されています。
また今回の研究は、大規模かつ長期間の調査によって貴重なデータをもたらしましたが、いくつかの限界点もあります。
参加者の約9割が非ヒスパニック系白人であり、全体的に健康意識や学歴が高い層に偏っていました。
そのため、アルコールの分解能力が低い人が多いとされる日本人を含むアジア人など、他の集団にそのまま当てはまるとは限りません。
また、過去の飲酒量を記憶に頼って申告しているため、実際の飲酒量との誤差が含まれている可能性があります。
それでも、この研究が私たちに伝えるメッセージは明確です。
大腸がんの前段階であるポリープの発生において、禁酒がリスクの低下につながる可能性が示されたことは、病気の予防において前向きな材料と言えます。
晩酌の量を少し減らしてみる、休肝日を設けるといった日々の小さな選択の積み重ねが、将来の腸の健康を守ることにつながるかもしれません。



























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