画像
Credit:Generated by OpenAI’s DALL·E,ナゾロジー編集部
brain

定説「壊れた脳は治らない」を覆す発見ー-脳の自然治癒力を維持する方法が見つかる

2026.05.16 12:00:57 Saturday

脳卒中で脳の一部が損傷すると、手足が動かしにくくなったり、言葉が出にくくなったりします。

しかも死んでしまった神経細胞そのものは、基本的に再び生き返るわけではありません。

しかし実際には、脳卒中の患者さんがリハビリテーションによって失われた機能をある程度取り戻すことがあります。

では、壊れた脳の中では何が起きているのでしょうか。

東京科学大学(Science Tokyo)を中心とする共同研究チームは、このほど、脳卒中後に脳の修復を助ける細胞が働き、やがてその回復力を失っていく仕組みを明らかにしました。

研究の詳細は2026年5月13日付で学術誌『Nature』に掲載されています。

「壊れた脳は治らない」を覆す -脳が自然に治る力を持続させる方法を発見!- https://www.igakuken.or.jp/topics/2026/0514.html
Sustaining microglial reparative function enhances stroke recovery https://doi.org/10.1038/s41586-026-10480-0

脳の中には「修理係」がいる

卒中の代表的な病気である脳梗塞では、脳の血管が詰まり、酸素や栄養が届かなくなった部分の神経細胞が死んでしまいます。

このとき、失われた細胞そのものを完全に元通りにすることはできません。

しかし脳には、残された神経回路をつなぎ直したり、神経の働きを支える構造を修復したりする仕組みがあります。

今回の研究で重要な役割を果たしたのが、ミクログリアと呼ばれる細胞です。

ミクログリアは、脳の中に住んでいる免疫細胞の一種です。

普段は脳内を見守る警備員のような存在ですが、脳が傷つくと現場に反応し、炎症を起こすだけでなく、修復を助ける働きもします。

研究チームは、脳梗塞を起こしたマウスを詳しく調べ、損傷後のミクログリアが「インスリン様成長因子1(IGF1)」といった、神経の回復を助ける物質を作ることを確認しました。

いわば脳が損傷すると、ミクログリアが「修理モード」に入り、神経のつなぎ目であるシナプスや、神経線維を包む髄鞘の回復を支え始めるのです。

そして、この修理モードを始めるスイッチとして働いていたのが、「YY1」というタンパク質でした。

YY1が働くことで、ミクログリアは脳を治すための物質を作れるようになります。

反対に、YY1の働きを失わせると、ミクログリアは神経修復に必要な物質を十分に作れなくなりました。

つまり今回の研究は、脳卒中後の脳がただ壊れっぱなしになるのではなく、内部で自然な修復プログラムを立ち上げていることを示したのです。

ただし、ここで大きな問題があります。

その回復力は、いつまでも続くわけではなかったのです。

次ページ脳の回復力は「消える」のではなく「止められていた」

<

1

2

>

人気記事ランキング

  • TODAY
  • WEEK
  • MONTH

Amazonお買い得品ランキング

脳科学のニュースbrain news

もっと見る

役立つ科学情報

注目の科学ニュースpick up !!