世界に2つしかない完全な頭骨が、CTにかけられた

ドードーと聞いて浮かぶのは、太って動きが鈍く、人が近づいても逃げない間抜けな鳥の姿ではないでしょうか。
ところが、その評判の出どころをどこまでたどっても、知能を確かめた観察には行き当たりません。
17世紀にモーリシャス島へ立ち寄った船乗りたちが、人を恐れない鳥だと書き残した。
ほぼそれだけです。
天敵のいない島で育った動物が人を恐れないのは、島の生きものにはありふれた性質です。
それがドードーの場合だけ「愚か」の代名詞として定着し、絶滅から300年以上たっても消えませんでした。
やっかいなのは、その評判を検証する材料が、長らく乏しかったことです。
この鳥は17世紀後半に姿を消しましたが、生きているうちに記録された行動はごくわずかで、しかも不正確でした。
剥製として残された個体は、一羽もいません。
脳はとうに失われており、その姿を探る手がかりは頭骨だけでした。
そこで研究チームは、世界に2つしかない完全なドードーの頭骨に、もう1点を加えた計3点を高解像度CTにかけました。
完全な2つは、デンマーク自然史博物館とオックスフォード大学自然史博物館の所蔵品です。
骨から脳を読むという芸当が成り立つのは、鳥の頭のつくりのおかげです。
鳥の脳は頭骨の内側にぴったり収まっていて、育つ過程で骨の内壁に自分の形を写し取ります。
つまり脳そのものが消えていても、内側の空洞を立体に起こせば、脳のどの部屋がどれだけ大きかったかを測ることができます。
比べる相手として、現生のハトやキジバト36種の頭骨も、同じ方法で調べられました。
するとまず目についたのが、目からの情報を受け取る部屋(視蓋)の小ささでした。
ドードーの場合、脳に占める割合が0.88%しかなかったのです。
同じマスカリン諸島にいた近縁の絶滅鳥ロドリゲスドードー(ソリテア)を同じ測り方で調べると、こちらは2.47%ありました。
最も近い現生種であるミノバトと比べても、ドードーの値はその3.5分の1以下です。
ドードー自身もハトの仲間なのに、視覚を処理する部分だけがここまで違っていたわけです。
そこで研究チームは、この部屋の大きさをハトだけでなく、フクロウからカラス、水鳥まで含む鳥類全体の中に置いてみました。
するとドードーはハトの群れから大きく外れ、フクロウのすぐ隣に落ちました。
こうした小ささは、細かく見ることに頼りきらず、暗い時間に活動する鳥に現れるパターンとして知られています。
ワイスベッカー氏も「この部分が小さいということは、多くの場合、脳に光の情報を届ける神経が少ないということで、視覚の性能は劣っていた可能性があります」と説明しています。
ここから研究チームは、ドードーは昼間だけの鳥ではなく、夜明けや夕暮れの薄暗い時間帯にも活動していた可能性があると推定しました。
薄暗がりを歩けば、島の昼の暑さを避けられるうえ、昼行性の巨大なゾウガメたちと餌を奪い合わずに済んだのかもしれません。
では、目だけでは足りない時間帯に、頼みの綱となったのは何だったのでしょうか。
浮かび上がったのは、鼻とくちばしです。
においを処理する嗅球は、脳の大きさに対する割合で見ると、平均してミノバトの4倍近くありました。
またくちばしのほうは、上くちばしからの触覚を脳に運ぶ神経の通り道が広がっていました。
あの巨大な上くちばしから、他のハトより多くの触覚の情報を受け取っていた可能性があります。
ただ現時点では、サンプルの少なさがネックになっており、共著者のオーブリー・カーナン氏も「ドードーは嗅覚にかなり頼っていたのではないかと考えています。ただ、それを本当に検証するには、比べられるデータがまだ足りません」と述べています。





























