眠っていても効いた幻覚キノコの成分

サイロシビンは、ある種の幻覚キノコに含まれる、心の働きに強く作用する成分です。
体に入ると、見え方や気持ちが大きく変わる強烈な体験を引き起こすことがあり、これは「トリップ」とも呼ばれます。
その一方で、うつ病では治療に役立つことが確かめられてきており、ほかの心の病気への効き目については意見が分かれています。
人と関わろうとする気持ちや力(社会性)を高められるのでは、と考える専門家もいます。
ただ、困った点もあります。
トリップ中の感覚や感情の大きな変化は、治療の場では扱いにくく、ときに心へ悪い反応を起こすのです。
では、長く続く効き目を得るのに、このトリップを起きたまま味わうことは本当に必要なのでしょうか。
これは、ずっと分からないままでした。
そこで研究チームが調べたのが、Cntnap2という遺伝子を持たないように育てられたマウスです。
人では、この遺伝子の違いが自閉スペクトラム症(ASD)と関係しています。
自閉スペクトラム症では、人と関わろうとする気持ちが弱く見えることが、目立つ特徴の1つです。
このマウスも、仲間と関わる行動が少なく、よく動き回り、同じ行動をくり返すという特徴を持っています。
チームは大人のこのマウスに、サイロシビンを1回だけ注射しました。
すると、ただの食塩水を注射したマウスに比べて、見知らぬマウスのそばを好むようになったのです。
この変化は注射の1日後から見られ、少なくとも2週間続きました。
さらに、薬が強く効いている時間にマウスを麻酔で眠らせておいても、社会的な行動を増やす効果は現れました。
つまり、この効果が出るのに、薬が強く効いている間にマウスが起きている必要はなかったのです。
研究者たちは、効き目は残したまま、心を大きく揺さぶる副作用は避ける治療を作れるかもしれない、と見ています。
ただし、これはあくまでマウスでの結果です。
またチームは、自閉スペクトラム症の治療法を探すことが目的ではなく、自閉スペクトラム症そのものを治すべきだと言っているわけでもない、とはっきり述べています。
彼らが知りたかったのは、脳の状態の変わりやすさ(柔軟さ)の方でした。
それにしても、マウスの「仲間への関心」は、いったいどうやって測ったのでしょうか。



























