ふつうのマウスでも社会性は上がった?

結果は、同じようには効きませんでした。
チームは、遺伝的に同じ系統で、Cntnap2遺伝子をふつうに持つマウス18匹にも、まったく同じ手順を試しています。
こちらは、仲間ともごくふつうに関わるマウスです。
ところが、このマウスでは、1回のサイロシビンで社会性は高まりませんでした。
それどころか、注射の1日後には、仲間と関わる行動がむしろ減る傾向さえ見られました。
研究者たちは、もともと社会性に問題を抱えていないマウスでは、良い効果が見られなかったと説明しています。
そのため彼らは、行動に偏りがない場合にサイロシビンを使っても、良い効果は限られるだろうと考えています。
どうやらこの成分は、どんなマウスにも効く「仲良くなる薬」ではないようです。
こうした効き方を考えるうえで、ヒントになりそうな考え方が1つあります。
研究をまとめた論文(総説)によると、幻覚をもたらす薬は、脳の働きをかたく決まった「定位置」から押し出し、薬が切れた後も神経の通り道を変わりやすくするといいます。
この見方に立つと、サイロシビンは、偏った行動の状態を、多くの個体に見られるふつうの状態の方へ近づける手助けをするのかもしれません。
ただし、これは今回の論文とは別の総説で示された見方です。
研究チームが「起きている必要があるのか」という問いにこだわったのにも、わけがあります。
悪いトリップは、その後の好ましくない行動の変化と結びついてきたからです。
この点が分かれば、幻覚をもたらす薬を使った治療をどう行うかが、現実に関わってくるかもしれないと彼らは話しています。
薬の効き目は、本人が何を感じたかだけで決まるとは限らないのかもしれません。
眠っている間に友だちづくりの準備が進んでいたなんて、当のマウスたちはきっと知らないままです。



























