時計の「振り子」を原子に任せる

原子時計は、原子の中の電子がエネルギーの段を乗り換えるときの決まった周波数を目印にして、時を刻みます。
この「時計遷移」にレーザーをぴたりと合わせ、その光の振動を振り子の揺れのように数えていくのです。
1960年代から秒の定義を担ってきたのはセシウムです。セシウム原子時計は、GPSや通信、交通網の同期を支えています。
一方、光を使う「光原子時計」は、はるかに高い周波数の遷移を使うため、同じ時間に数えられる振動がずっと多くなります。
目盛りの細かい物差しほど細かく測れるように、そのぶん時間を正確に測れるのです。
近年の記録は、イッテルビウムやストロンチウム、アルミニウムを使った時計が持っていました。
ただし原子時計の目印は、温度の変化や磁場によってわずかにずれてしまいます。
そこで研究チームが10年以上前から目をつけていたのが、ルテチウムです。
ルテチウムの時計遷移は、温度にも磁場にもほとんど影響されません。
チームを率いるマレー・バレット氏は「地球上で最も暑いデスバレーから南極高原の最も寒い場所へ移しても、ルテチウム時計は安定しているでしょう」と語ります。
研究チームは、電気を帯びたルテチウム176のイオンをたった1個だけ使い、それに波長848ナノメートルのレーザーを合わせて時計にしました。
さらに「超微細平均化」という方法を自ら考え出し、外からの磁場などの影響をほぼ打ち消せるようにしています。
とはいえ、ここまで正確な時計を同じ種類の時計同士で比べて確かめることは、これまで大きな課題として残っていました。



















