食べ物はレジャー体験の「楽しみ」を阻害する?
主任研究員のアン=キャスリン・クレッセ(Anne-Kathrin Klesse)氏とエミリー・ガルビンスキー(Emily Garbinsky)氏は、こう話します。
「レジャー企業は、顧客が存分に楽しめる体験を作り出すため、意図的に食べ物をあつかっています。
たとえば、遊園地や映画館、コンサート会場などでは、楽しみを増やすために様々な食事を提供しています。
しかし、今回の研究結果は、この戦略が実際には裏目に出ている可能性を示すものとなりました」
調査は10回にわたって実施され、被験者には、クッキーやデザートなどの魅力的な食べ物がある場合とない場合とで、さまざまなレジャー体験をしてもらいました。
その後、被験者には、レジャー体験の楽しさの度合いを評価してもらっています。
コンサート会場で行われた実験では、チョコクッキーを提供することで、観客の気がどれだけ削がれるかを調べました。
すると、研究チームの予想通り、クッキーを食べながら音楽を聴いた人は、食事をせずに音楽を聴いた人に比べ、主観的な楽しみが減っていたのです。
クレッセ氏は、次のように説明します。
「コンサート体験を最大化するには、観客が十分に楽しめる環境をつくることが大切です。
しかし、魅力的な食べ物の存在は、『次に何を食べようか』と脳を誘引することで注意をそらし、レジャー体験への関与と楽しみを減少させてしまうのです。
実験の結果は、どのような環境要因が消費者の継続的な楽しみに悪影響であるかについて、重要な洞察を与えてくれます」
確かに、映画の鑑賞時でも、ポップコーンを食べている間に、物語の鍵となるセリフやシーンを見逃してしまうことがないでしょうか。
その一方で、本研究では、魅力的な食べ物の存在が反対に、退屈でネガティブな体験の楽しみを高めてくれることも判明しました。
チームは、被験者に不快な写真を見てもらい、食べ物を提供する場合としない場合とで、不快感の度合いを調査。
すると、食べ物がある場合では、不快感が軽減されることが示されています。
クレッセ氏は、これを受け、「各企業は、観客が行列に並んでいる時など、退屈な経験をしている状況下では、その体験をネガティブなものにしないために、魅力的な食べ物を提供すると良いでしょう」と指摘します。
特に、遊園地では何時間待ちなんてこともザラにありますから、軽食を用意しておくと、脳が感じる退屈さを軽減できるはずです。
また、ポップコーンも映画が始まるまでの待ち時間に食べ切ってしまうのが良いかもしれません。