「逃げ」のリスカが自傷中毒を引き起こす
今回の研究により、自傷行為の背後にはストレスホルモンの分泌不足があり、自傷は偏桃体と前頭葉の接続を損なうことが示されました。
自傷行為によって分泌される大量のストレスホルモンは、ストレスと戦うための手段になりますが、慢性化すると自傷なしにはストレスに対処できなくなってしまいます。
また繰り返される自傷によって精神が消耗すると恐怖を司る偏桃体の働きが鈍り、理性を司る前頭皮質との接続も弱まり、正常な恐怖を感じることも難しくなる可能性があります。
結果、些細なストレスも大きなストレスとなり、ストレスを緩和するために自傷に至り、さらに脳への異常が蓄積していきます。
ある意味では自傷は覚せい剤のような働きを持っていると言えるでしょう。
簡単には癒えない心の傷を、ある程度は治ることがわかっている体の傷で埋め合わせようとする行いは魅力的だと言えますが、残念ながら長続きはしないようです。
統計的に自傷行為と自殺は深く結びついていることが判明しているからです。
強引な自傷という手段を用いたストレスからの逃げは一時的な対処に過ぎず、問題を先送りにして解決をより困難にするからです。
ただ幸いなことに、自傷をやめることで神経生物学的な異常は元に戻るとされています。
研究者たちは今後、自傷がどのような経緯で発生したかを調べていくとのこと。
いくつかの自傷は幼年期の虐待が原因であるとされており、虐待が脳の接続変化やストレスホルモンの分泌不良を起こした可能性があるからです。
もし詳しい仕組みが解明されれば、自傷がピタリと止まる薬が開発されるかもしれません。