歌でミトコンドリアの性能を調節する鳥がいると判明!
オーストラリアの乾燥地帯に生息するキンカチョウの親は、気温が26℃以上になると「ヒートコール」と呼ばれる鳴き声を発します。
これまでの研究によって、この鳴き声(ヒートコール)を卵の内部で聞いたヒナは孵化後の成長が抑えられ、体が小さくなることが知られていました。
体のサイズが小さいと、体積に対する表面積の割合が大きくなり、熱をより効率的に逃がすことができると考えられます(※体の大きいシロクマは逆に熱を逃がしにくい)。
しかし、音がいったいどんな原理でヒナの成長に影響するかは、詳しくわかっていませんでした。
そこで今回、ディーキン大学の研究者たちは、集めてきたキンカチョウの有精卵(約50個)を2つのグループにわけて、一方のグループにのみ「ヒートコール」を聞かせることにしました。
そしてヒナが産まれると血液を採取し、違いがあるかどうかを比較しました。
結果「ヒートコール」を聞かされた卵から産まれたヒナは、ミトコンドリアが熱生産(エネルギーの放出)よりもエネルギーの備蓄を優先するように変化していることを発見しました。
鳥類などの恒温動物においてミトコンドリアは体の温度を一定に保つための「熱生産」と細胞の分裂・成長などに使われる「エネルギーの備蓄」の両方を行う「熱発電所」とも言える存在ですが、親鳥が暑い日に発する「ヒートコール」よって「熱生産が減速」し「エネルギー備蓄が加速」していたのです(※ミトコンドリアがつくるエネルギーは高エネルギー物質(ATP)に変換して蓄えられ、細胞の増殖や修理に用いられる)。
つまり、親鳥は「暑いぞ~暑いぞ~」と歌うことで、ヒナの体を小さくして熱放散を大きくするだけでなく、ミトコンドリアの性能も発熱よりエネルギー備蓄の重視にシフトさせていたのです。
そして孵化したヒナは、熱に耐性をもちながら、体温維持よりも成長を優先させることが可能になります。